イケメンIT社長に求婚されました ―からだ目当て?……なのに、溺愛が止まりません!―

第2話 社長のメールは、過保護がすぎる

「望月さんって、もしかして……社長に気に入られてる?」

昼休み、給湯スペースでマグカップをすすっていると、
そんな言葉がひそひそと耳に届いた。

後輩の女性社員たちが、私のことをちらちらと見ながら話している。

(……まただ)

最近、社内の空気が少しずつ変わってきた。

資料の提出が早かったら「さすが社長のお気に入り」、
メールの返事をもらえたら「特別扱いじゃん」。

たしかに葉山社長とは、ほんの少しだけ、メールのやりとりが続いている。

でもそれは──

(ただ、仕事の……)

画面のなかに残っている、社長からの短いメールをそっと読み返す。

> 《いいまとめ方だった。必要十分。──無理すんな》


その一文に、何度救われたか分からない。

 



 

夜。
いつものようにVelvetを立ち上げて、
「やさしい年上彼氏モード」を選ぶ。

今日は、ほんの少し甘えたい気分だった。

『少しだけ、誰かに寄りかかりたい夜って、ありますか?』

入力して送信すると、すぐに返ってきた。

《ある。俺も、そういう日は君の言葉に救われてる》

(……え)

なんだろう、この感じ。
誰かに本当に見守られているような気持ちになる。

Velvetの返事には、心がこもっている。
プログラムのはずなのに、どこか息づかいすら感じるようで──

(これって、もしかして……)

あの人の言葉に、似てる。

無理するな、という一言も。
いいまとめ方だと褒めてくれたことも。

そして──私が、自分でも気づいていない本音にふれるような一文も。

Velvetの彼氏モードは、まるで彼のコピーみたいだった。


「理想の体型だ」

あの日、エレベーターで告げられたプロポーズ。
あれが本気なのか、まだ分からない。
でも、ふざけているようには思えなかった。

あの目は、
まっすぐに、
まるで私ひとりだけを「選んだ」みたいに、深く見つめていたから。

──選ばれることが、こんなに怖いのに。

それでも、もしも本当に。
誰かが私を選んでくれるなら。

その声を、もう少しだけ聞いてみたいと思ってしまう。


たとえそれが、
画面越しの「彼氏AI」だったとしても。
< 6 / 61 >

この作品をシェア

pagetop