魔法使い時々王子
第二十四章 春庭に揺れる心
舞踏会から、数週間が過ぎた。

柔らかな春の光が差し込む窓辺で、アリスは一通の手紙を静かに読んでいた。

——シドからの手紙だった。

そこには、ルイ王子にすべてを伝えたこと。
そして、アリスに時間を与えてほしいと頼んだことが綴られていた。

どれほど順調に事が進んでも、この計画の実行には二、三ヶ月はかかるという。

だから——焦らず、ゆっくり考えてほしいと。

そして最後に。

もし、セオを愛しているのならば——
この話はすべて白紙に戻す。

星晶の件は、両国の国王に委ねる。

そう、はっきりと書かれていた。

アリスは手紙を閉じる。

静かに、深く息を吐いた。

そのまま視線を窓の外へと向ける。

やわらかな春の空。

穏やかな景色とは裏腹に、胸の内は少しも落ち着かなかった。

(……もうすぐ)

イスタリア王国の、建国記念日。

シドの手紙にもあった通り——
その日が終わるまでは、ミロとの交渉が再び動き出すことはないだろう。

ほんのわずかに与えられた、猶予の時間。

「……考えないと」

小さく、呟く。

けれど——

その答えは、まだ見えなかった。
< 322 / 322 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

レムナント
tiara../著

総文字数/48,381

ファンタジー98ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
子持ち冷酷王子×王子の側近 「…俺にはルーンを一生かけて守っていく義務がある。」 「私は殿下の側近です。いつもお側にいて殿下の力になりたい…!」 王宮ラブファンタジー 十十レムナント十十
白雨の騎士
tiara../著

総文字数/104,720

ファンタジー219ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「…あの人が居ると白雨が降るの。白雨の後には虹が出るわ。」 国王の娘で時期女王 アリス 「近衛隊に入る事が俺の夢なんだ。」 王宮の近衛になる事を夢見る青年 シド 姫 × 騎士 王宮ラブファンタジー ++ 白雨の騎士 ++
Christmas Rose
tiara../著

総文字数/96,842

ファンタジー190ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
◇◆◇◆◇◆◇◆ 国王になるべくして育てられた一国の姫 「…男として生きてきた私が、今更、女になどなれるのか。。」 大国の次期国王候補 「これからは、俺の為に生きるんだ。」 男勝りな姫 アリスと 心優しい王子 シド ***二人が送る王宮ラブファンタジー*** Christmas rose 〜男勝りなお姫様〜 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop