自爆しないで旦那様!
(2)お世話係とエリマキトカゲ
***
リーシャが暮らす小さな家は、アルブの町の片隅にある。
実家はもっと西の地方にあるのだが、大学通いをするためにリーシャだけこちらに住むようになった。
「ただいま~」
「お帰り、リーシャ」
否、訂正しよう。
リーシャ「だけ」ではなかった。
この家にはリーシャの昔からのお世話係、オーチェも一緒に住んでいる。
「お腹空いたぁ……。オーチェ、今日の夕食は何?」
「ロールキャベツだよ。お隣のおばさんから新鮮なキャベツをいただいてね」
銀髪に水色の瞳がいつ見ても美しい。
ふわりと優しげに笑う中性的な顔立ちの青年、オーチェ。
彼はリーシャが小さな頃からずっとリデア家に居候しており、謎が多い人物だ。
しかしそんなオーチェとリーシャはずっと仲良しである。
リーシャにとって彼は頼りになるお兄さん的存在だ。
そんなオーチェは、リーシャが実家を離れて一人暮らしすることになると当たり前の如くついて来た。
リーシャの両親もオーチェが一緒の方が安心とのこと。
リーシャの家事能力は「危なっかしい」の一言に尽きるのだ。
「オーチェのロールキャベツ、久しぶりだね。楽しみ」
「できたら呼ぶよ」
「うん、それまでは部屋にいるね」
そう言ってリーシャはギシギシ鳴る木の階段を上がり、二階にある自室へと向かった。
部屋の扉を開け、恐らく居るであろう存在に声を掛ける。