自爆しないで旦那様!
「いいですか。もう二度と、あのようなことはしないでください。魔術による呪いは禁忌、つまり犯罪です。今度また同じことがあれば治安警備隊に貴女を突き出しますので、そのつもりでいてください。では、失礼します。行きましょう、リーシャ」
しっかりと釘を刺し、リーシャの肩を抱き寄せて離れ去る。
ヘレナはそれ以上、追いかけてはこなかった。
「大丈夫でしたか?貴女が迫られているのを目にして、慌てて来たのですが……何かされていませんか?」
「大丈夫。ありがとう、エミリオ」
「何もなかったなら良かったです。また僕の知らないところで貴女が傷つけられていたら……僕は……」
落ち込みモードに突入しそうなエミリオの表情に、リーシャはムッとする。
「もうっ、嫌なことを想像して落ち込まないで」
「ですがっ」
「エミリオの悪い癖だよ。想像と仮定の話はほどほどにして」
「どうしたどうした?ケンカか?仲がよろしいことで」
よっこらしょと鞄の中から出てくるエリマキトカゲ。
「リッちゃ〜ん!」
ベンチの方からはマリーの呼ぶ声がする。
もう中庭に到着していたリーシャ達はマリーの座るベンチへと歩いていった。
そして早速、マリーに昨日の出来事を詳しく話す。
「死の呪い!?リッちゃん大丈夫だったの!?」
「うん。エミリオが助けてくれたから」
「流石エミりん!リッちゃんのいい旦那様になれるわよ!」
「ぶっ!」
「ちょっと、ラズ汚い」
エリマキトカゲがパクついていたチキンサンドを口からふっ飛ばす。
注意したリーシャも、マリーの言葉に対する照れ隠しに会話をぶち切りたかっただけである。
エミリオはほんのり頬を赤らめてからコホンと咳払いをした。
「マリー、その冗談は、僕がリーシャと結婚する可能性を示唆しているんですか?」
「んにゅ?マリーちゃん、難しい言葉はわからないけど、リッちゃんとエミりんが仲良し夫婦になってくれたら嬉しいわ!」
「ま、マリーちゃん!?」
「そうですか……」
「なに真面目に納得してんのエミリオくん?食いかけチキン飛ばすよ?」
笑いがあり、ふざけ合える何気ない日常の会話。
昨夜、死と隣り合わせだったことやエミリオの自爆が嘘のようだ。
今はヘレナからの嫌な視線もない。
久しぶりにリーシャ達は和気あいあいと昼休みを過ごした。