(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「そうなんだ・・。苦手な先生だったとか? 困った顔してるから」

「うん・・・・まぁ、そんなところ」

もう少し聞きたかったけれど、疲れている彼女を問い詰めるのもどうかと思い、ひとまずそこまでにする。

「茉祐、新幹線までまだ少し時間があるから、軽く食べようか。お腹すいてる?」

「えっ・・。あ、少しなら食べれるかな」

「じゃあ、あの改札の脇にあるカフェに入ろう。食事もできそうだし、ケーキだけでも大丈夫そうだから」

俺は彼女の左手からバッグを受け取り、その手を握る。
驚くほど冷たくて、よほどさっきの男と話したくなかったんだろうと考えた。

本当に、誰なんだよ・・。

彼女は外科と救急医療がメインだったはずだから、その分野の先生だろうか。
見えたのは後ろ姿だけだったけれど、若い医師には見えなかった。

「ね、祐一郎は何にする?」

「あ・・うん。そうだな、和風パスタにするよ」

注文したパスタが提供されるまでの間、ふと大翔が言っていたことが頭をよぎる。
確かあの時・・。

『俺、茉祐子が困ってる時に話聞いてやれなくてさ。それどころか、責めたんだ』

彼女が困っている時に・・と言っていた。
もしかしたら、さっきの男と何かつながりがあるのだろうか。

原因はともかく、頼んだチーズケーキすら口にしていない彼女が気になった。

結局、その後も彼女は塞ぎがちで、ほとんど会話らしい会話もせずに俺たちは東京に戻り、そのままそれぞれの家に帰った。



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