(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「えっ、西島先生?」

角を曲がってすぐのところにあるコンビニから、彼女が出てきて俺に気づく。
不思議そうに俺を見上げる彼女に、言葉が出なかった。

「あ・・えっと・・その・・。出歩いて、大丈夫ですか?」

「え? ・・・・もしかして、心配して戻って来てくださった・・とか?」

まだ息が整っていない俺に、彼女はそう言った。
上手くごまかす理由も思いつかず、素直に返事をする。

「・・はい。ちゃんと部屋に入るところまで、見届ければ良かったと思って」

それを聞いた彼女は、やわらかく微笑んだ。

「もう大丈夫です。でも、ありがとうございます。あ・・これ、良かったらどうぞ」

袋からペットボトルの水を取り出し、俺に差し出す。
すぐ近くにある公園のベンチにふたりで座り、俺は彼女にもらった水を飲みながら尋ねた。

「大翔の・・大学の同級生なんですよね?」

「はい。西島先生は、ハルの同期ですか? 仲良さそうだったから」

「ハル・・」

「あー、大学のサークルでみんなに『ハル』って呼ばれていて」

「なんだ、そういうことか」

え?と、首をかしげる彼女に、俺は慌てて弁解する。

「あ、いや・・。大翔もあなたを『茉祐子』って呼んでたから、結構近しい関係なのかなって勝手に思っていました」

「ただの友人ですよ。同級生は下の名前で呼び合う感じのサークルだったので、みんな私のことも『茉祐子』って名前で呼んでいました」

ふふふっと笑う彼女を見て、なんだかホッとした。
痛みも落ち着いたように見えるし、大翔との関係もそれほど深いものではなかったから。



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