(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
仮眠の最中も、その後の日勤スタッフに交代するまでの間も、救急外来に呼び出されることはなく勤務を終えた。

自宅近くのパン屋で朝食を買い、家に帰る。

コーヒーを淹れてパンを食べつつ、彼女の気配が無いことが寂しかった。

当直明けで、彼女が仕事で出かけた後の家に帰ることは今までも当然あった。
でもなんというか、ついさっきまで彼女がいたんだという余韻が残っていて、存在を感じさせるのだ。

暖房の暖かさの残る部屋とか、シンクに置かれたマグカップとか、ほんのちょっとしたことだ。

明日の夜には帰ってくるのにな・・。

俺は今夜も当直の予定で、今日の彼女の仕事終わりに会いに行くことは難しい。
彼女がいない間に当直を連続で入れて、帰ってくる金曜は当直明けに、その翌日の土曜は休みにするよう調整したからだ。

そういえば、大翔はいつ彼女に会いに行くんだろう。
昨日の夜に『明日』と言っていたから、今日だな・・。

なんだか、彼女の脳内が大翔で埋め尽くされそうな気がして、俺も差し入れを持って会いに行こうと思い立つ。
すぐにスマートフォンを起動し、彼女に空き時間を尋ねた。

返ってきた返信には、13時半〜15時と書いてある。
この時間帯なら、当直にも間に合う・・。

彼女への差し入れをスマートフォンで検索しつつ、俺は苦笑いする。

嫉妬心か独占欲か・・。
どちらにしろ、彼女にとって俺が一番であってほしい。
たとえ大翔が会いに行っても、すぐにまた俺を想ってほしい。

それだけだ。



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