ホリー・ゴライトリーのような女
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当時はまだ、駅の北口に喫煙所がなかった。


北口の階段を降りると、待ち合わせをしている人、キャッチをしている人がこぞってタバコを吸っていて、辺りにはタバコの吸い殻にまみれていた。かくいう僕も、その習わしに従った。そういう喫煙者の悪い行動が、悪いイメージを植え付ける。まさかこんな時代になるとわかっていれば、こんなことはしなかった。東京オリンピックの開催に伴い、居酒屋でも分煙される時代が来るなんて、果たしてどれくらいの人が予想しただろうか。


金髪の男は、中山さんと言って、歳は僕よりも上の24歳だった。


その中山さんを待って、タバコを吸っていると、駅の階段から、ミュージックステーションのアーティスト登場のような感じでやってきて、僕を見つけるなり、「やあやあ、昨日は!」と言って、手を振ってきた。


「じゃあ、ちょっとコンビニに寄ろっか」


と言って、中山さんと僕は駅の下のアーケード街にあるコンビニに入った。中山さんはボールペンと履歴書を買って、僕に持たせた。


「はい、これ。すぐ書いて。志望動機とかそういうのはいいから」


僕はわけもわからず、中山さんに言われた通り書いた。それを見て、中山さんからOKをもらい、今度はアーケード街の一番端にあるサイゼリヤの前の証明写真を撮る機械に入れられ、僕は証明写真を撮らされた。


それを水のりで貼った中山さんは、履歴書を僕に戻し、「じゃあ、行こっか」と言った。何が何だかわからず、とりあえず僕は中山さんについて、アーケード街を歩いた。


反対側の端まで来て、中山さんはアーケード街を出て、そのすぐそばにある2つのコンビニのうち、1つに入った。


「お疲れ様でーす。店長いる?」


と店員に声をかけ、「事務所にいますよ」と言われた中山さんは、僕の腕を掴んで、レジの中、そしてその先にある「事務所」と書かれた扉を開け、中に通された。



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