過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜
静まり返った部屋の中、微かな冷房の風がカーテンを揺らしていた。

ふと、大雅が目を覚ました。
「……ん……」
ぼんやりとした意識の中で、首筋に感じる重さと柔らかなぬくもりに気づく。

——しまった。

ゆっくりと視線を動かすと、自分の頭は雪乃の膝にすっかり預けられたままだった。
彼女に寝かしつけてもらうつもりが、いつの間にか本気で眠ってしまったのだ。

慌てて起き上がり、雪乃の方へ顔を向けると、彼女もまたソファにそのままもたれて、軽く口を開けて眠っていた。
薄着の肩が少し冷えているようで、慌てて彼女の手首に指を添える。

「……脈、正常。よかった……」
静かに息をつくと、そっと声をかけた。

「雪乃、起きて。ベッドで寝よう。こんなとこじゃ体冷えるよ」

しかし、雪乃は薄く目を開けると、もぞもぞと首を振った。

「……むり。もう動けない。ここで寝る……」

「だめ。ソファじゃ身体痛くなるし、冷えるから」

大雅は立ち上がり、冷房のリモコンを手に取ると、設定を睡眠モードに切り替えた。
静かに風量が弱まり、室内がやさしい温度に整えられていく。

「……ったく、しょうがないな」

彼はソファに戻ると、まだうとうとしている雪乃を優しく抱き上げた。

「ん……」
雪乃は小さく声を漏らしたが、抵抗はせずに彼の胸に顔を埋めた。

ゆっくりと寝室へ運び、ベッドの縁にそっと彼女の身体を下ろす。
ブランケットを胸元までかけてやると、ふわりと額にキスを落とした。

「……おやすみ、雪乃」

隣に身体を滑り込ませ、彼女の手を包むように握る。

雪乃の静かな寝息が、大雅の胸の奥まで温かく沁み込んでくる。
彼女の存在をそばに感じながら、彼もまた、安心したように目を閉じた。

――この夜が、どうか静かに、優しく、二人を包んでくれますように。
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