100万本の花束を
「あなた。どうしたの?」
「なんだか、落ち着かなくてね」
「珍しいわね。そんなあなた」
「気にしないでいいよ」
「さあ、これから一緒に、散歩にでも行くかい?」
「たまにはいいわね」
「じゃぁ、準備しよう」
「美智子。今日はいい天気だね」
「そうだね」
「ほら、ごらん」
「なに? わああああああああ」
「100万本の薔薇だよ」
「き、れ、い・・・・・・」
「昨日見つけたんだ。この市民公園。引っ越してきて
まだ、俺達二週間だから。気付かなかったんだ」
「なんて素敵なの」
「気に入ってくれたかい?」
「もちろんよ」
「良かった。ほっとしたよ」
「そろそろ帰ろうか」
「わかった」
「ありがとう。お返しと言ったらなんだけど、夕飯は
あなたの好きな焼肉にする?」
「それは、嬉しいな。ぜひ、そうしてくれ」
「それじゃぁ、今から買い物に行かなきゃ。あなた、荷物
持ってね」
「もちろんだとも」
陽が、ゆっくりと落ちかけていた。