こちら元町診療所
past memories

『子さん‥‥靖子さ‥‥起きれます?
 靖子さーん!!朝ですよー!』


えっ!!?
さっきまで飲んでたのにもう朝!?


勢いよく起き上がると、同時に襲う酷い
頭痛に頭を両手で抱える。


あれ?ここまでどうやって帰ってきた?

ちゃんとお布団で寝ていることにも
ビックリしてるけど、記憶がなさ過ぎる
自分に引いてる。


「浜ちゃん‥‥私‥迷惑かけたよね‥
 ほんとごめん!!」


ガンガンする頭を布団に押し付け
浜ちゃんに土下座をした。


旅行だからといってハメを外し過ぎ
る先輩なんて情けない!!


『私は何もしてませんよ。だって
 王子様がお姫様抱っこして運んで
 来てくれましたから。』


えっ?


『素敵だったなぁ‥‥。みんな2人を
 見てキャーキャー騒いでましたよ?
 先生ったら腕の中で眠る靖子さんの
 オデコにキスまでしてましたから。』


ええっ!?


「先生って‥か、叶先生だよね?」

『当たり前じゃないですか。
 お布団に寝かせてからも、先生
 しばらく靖子さんの寝顔を眺めて
 頭を撫でてましたよ?』


嘘でしょ!?
みんながいるところでそんなことを
堂々としてたの!?


二日酔いで顔色が悪いだろう私は、
その事実に倒れそうなほど青ざめた
に違いない。


酔っていたとはいえ、抵抗できなかった
し、運んでもらっておいて文句すら
言えないけれど、流石にやり過ぎじゃない!?


浜ちゃんから聞いたことを頭で妄想
すると赤くなったり青くなったりと
忙しい感情の起伏にそのまま布団に
また倒れた。


師長さん達に会うのが怖すぎる‥‥。


眠気覚ましに温泉に浸かり、熱めの
シャワーで少しでも頭をスッキリ
させつつも、朝食に行くのが怖過ぎて
結局食べずに部屋に閉じこもった。



『昨日の先生ほんっと素敵でしたわ!』
『私もそう思います!師長!』
『お医者様としてもですし、介抱する
 姿に感動しました!!
 中原さん!!あなたそんな事を
 酔っ払って忘れてるなんて勿体無い
 ことをして!!』


「‥‥‥‥‥」


心配された周りの反応が思っていたことと180度違った事に絶句したものの、
とりあえず責められることはなかった
から一安心したのだ


『靖子、気分が悪かったら薬あるから
 教えて?ここにいるから。』


「結構です、どうぞお構いなく。」
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