それでも、あなたを愛してる。【終】
「なら、全くもって悩む必要なんてないじゃん。それが答えじゃない。─皇」
「なに?」
「一年半前、あんたが管理者として、依月を連れ去ったと聞いてるけど。本当なの?椿のおふたりに会って、依月を預かると話したの?私もそう認識してたんだけど、そういえば、あんた、契たちと関わっていく中で一度も、その話題を出さないから気になって。契が望んでなかったから、私からは何も言わなかったけど、流石にあんたの性格を思えばおかしいわ」
すると、皇は目を瞬かせた。
彩蝶はいろはの手を握り、皇を見る。
「私が当主になるならないの話をした日。契が会話に混ざった日。あなたはその前に、椿家を訪ねたのか聞いてるの」
「ああ、調律者に彩蝶の元に送り込まれた……」
「送り込まれたの?」
「うん。いろはが見つからなくて」
皇はいろはの頭に触れ、目を細める。
「時巡りしすぎて、精神的に限界を迎えていた時、いきなり現れた調律者が『遅くなってごめん。やること多くて。─ほら、おいで。彩蝶の元へ送るよ』って」
「それでホイホイ飛ばされたの?」
「疲れてたんだ……」
「そう。それで?」
「椿家は訪ねてないよ。だって、彼らから逃げる彩蝶の前に、調律者は飛ばしてくれたから」
サラッと放たれた一言は、また、契のなかの何かを壊しにかかってくる。
頭がこんがらがる一方で、吹っかけた彩蝶は冷静さを保ったまま。
「─じゃあ、それが調律者か」
と、舌打ちした。