それでも、あなたを愛してる。【終】
☪︎·̩͙
「─こんにちは」
悠月が言った通り、現れた男─あの日、刹那が悠月を託した、悠月の夫─御影飛鳥は対面に座りながら、微笑んだ。
こうやって見ると、ヤクザなどとは思えないくらいに優しい雰囲気をしており、彼の職業を疑う。
「手続きは、済みましたよ」
「…早くない?」
「悩む余地も与えない方が良いかと」
にこやかな雰囲気から感じる圧は、やっぱり、彼は裏社会の人間なのだと、刹那に刻みつけてくる。
「……俺がやっていることが、正しいとは思えないんだ」
「そうですか」
「でも、何かしていないと、気が狂いそうで」
「……」
「変なことを言ってる自覚はあるよ。俺が変に弄ったんだから、その責任を、その帳尻を合わせているだけなんだよね」
1番初め、目が覚めた時。
弄ってしまった、世界の理。
その歪みを、ゆっくりと直すための日々。
そして、また、刹那は大切な人のために運命を調律し、歪ませている。
正解など分からない日々で、何となく、ずっと、ずっと、神だなんだって、そんな崇高な存在なんかじゃないし、理想もないし、ただ、ただ。
「─彩蝶さんを救うためでしょ?」
「……っ」
心を見透かされたような。
彼の言葉に、刹那は何も言えなくなる。
「最愛を救うために、世界の理を歪ませた?─上等じゃないですか。俺もそうしますよ」
まさか同意を得られるとは思わなくて、刹那は目を瞬かせることしか出来ない。
「そんな、傲慢……」
「人間なんて、誰もが自分勝手で傲慢な生き物なんですから。とりあえず、今、貴方は依月さんを契さんの元に返したい、時間がかかりすぎていて悩んでいる、って辺りなんですよね」
「当たってるけど、やっぱり、盗聴器かなんかあの子に仕込んでいるよね!?」
刹那が問い詰めると、彼は笑った。
「─知らなければ幸せなこともあるんですよ」
「いやいやいや、上手いこと言ってるけど」
「あいつは何も知りません。前のことも、俺のことも覚えていないし、思い出させたくもない。それでいいんです。忘れたままで。何も知らなくていい。でも、ひとりであいつを世間に出すには、世間知らずな部分がありますし。それが不安でつけているだけですよ。主な目的としてはね。それに、盗聴器に関しては多分、気付いていますし」
「ああ、そう……」
全てを捨てさせた身だから、あの子が世間知らずなのは承知の上だし、これもふたりの形だと思えば、突っ込む気力も起きなくて。
「この半年の間、それはもう、各々が自由に依月さんへの手がかりを探しています。空間に閉じ込めておくことに限界を感じているのなら、一度、二人で出てきませんか?」
刹那は、身分がない。
だから、彼のような保証人がいて、色んなものを用意してくれるのはありがたい。
でも、人間のような生活をすれば、間違いなく、刹那は耐えられなくなる自信がある。
「─こんにちは」
悠月が言った通り、現れた男─あの日、刹那が悠月を託した、悠月の夫─御影飛鳥は対面に座りながら、微笑んだ。
こうやって見ると、ヤクザなどとは思えないくらいに優しい雰囲気をしており、彼の職業を疑う。
「手続きは、済みましたよ」
「…早くない?」
「悩む余地も与えない方が良いかと」
にこやかな雰囲気から感じる圧は、やっぱり、彼は裏社会の人間なのだと、刹那に刻みつけてくる。
「……俺がやっていることが、正しいとは思えないんだ」
「そうですか」
「でも、何かしていないと、気が狂いそうで」
「……」
「変なことを言ってる自覚はあるよ。俺が変に弄ったんだから、その責任を、その帳尻を合わせているだけなんだよね」
1番初め、目が覚めた時。
弄ってしまった、世界の理。
その歪みを、ゆっくりと直すための日々。
そして、また、刹那は大切な人のために運命を調律し、歪ませている。
正解など分からない日々で、何となく、ずっと、ずっと、神だなんだって、そんな崇高な存在なんかじゃないし、理想もないし、ただ、ただ。
「─彩蝶さんを救うためでしょ?」
「……っ」
心を見透かされたような。
彼の言葉に、刹那は何も言えなくなる。
「最愛を救うために、世界の理を歪ませた?─上等じゃないですか。俺もそうしますよ」
まさか同意を得られるとは思わなくて、刹那は目を瞬かせることしか出来ない。
「そんな、傲慢……」
「人間なんて、誰もが自分勝手で傲慢な生き物なんですから。とりあえず、今、貴方は依月さんを契さんの元に返したい、時間がかかりすぎていて悩んでいる、って辺りなんですよね」
「当たってるけど、やっぱり、盗聴器かなんかあの子に仕込んでいるよね!?」
刹那が問い詰めると、彼は笑った。
「─知らなければ幸せなこともあるんですよ」
「いやいやいや、上手いこと言ってるけど」
「あいつは何も知りません。前のことも、俺のことも覚えていないし、思い出させたくもない。それでいいんです。忘れたままで。何も知らなくていい。でも、ひとりであいつを世間に出すには、世間知らずな部分がありますし。それが不安でつけているだけですよ。主な目的としてはね。それに、盗聴器に関しては多分、気付いていますし」
「ああ、そう……」
全てを捨てさせた身だから、あの子が世間知らずなのは承知の上だし、これもふたりの形だと思えば、突っ込む気力も起きなくて。
「この半年の間、それはもう、各々が自由に依月さんへの手がかりを探しています。空間に閉じ込めておくことに限界を感じているのなら、一度、二人で出てきませんか?」
刹那は、身分がない。
だから、彼のような保証人がいて、色んなものを用意してくれるのはありがたい。
でも、人間のような生活をすれば、間違いなく、刹那は耐えられなくなる自信がある。