それでも、あなたを愛してる。【終】
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「─こんにちは」

悠月が言った通り、現れた男─あの日、刹那が悠月を託した、悠月の夫─御影飛鳥は対面に座りながら、微笑んだ。

こうやって見ると、ヤクザなどとは思えないくらいに優しい雰囲気をしており、彼の職業を疑う。

「手続きは、済みましたよ」

「…早くない?」

「悩む余地も与えない方が良いかと」

にこやかな雰囲気から感じる圧は、やっぱり、彼は裏社会の人間なのだと、刹那に刻みつけてくる。

「……俺がやっていることが、正しいとは思えないんだ」

「そうですか」

「でも、何かしていないと、気が狂いそうで」

「……」

「変なことを言ってる自覚はあるよ。俺が変に弄ったんだから、その責任を、その帳尻を合わせているだけなんだよね」

1番初め、目が覚めた時。
弄ってしまった、世界の理。

その歪みを、ゆっくりと直すための日々。
そして、また、刹那は大切な人のために運命を調律し、歪ませている。
正解など分からない日々で、何となく、ずっと、ずっと、神だなんだって、そんな崇高な存在なんかじゃないし、理想もないし、ただ、ただ。

「─彩蝶さんを救うためでしょ?」

「……っ」

心を見透かされたような。
彼の言葉に、刹那は何も言えなくなる。

「最愛を救うために、世界の理を歪ませた?─上等じゃないですか。俺もそうしますよ」

まさか同意を得られるとは思わなくて、刹那は目を瞬かせることしか出来ない。

「そんな、傲慢……」

「人間なんて、誰もが自分勝手で傲慢な生き物なんですから。とりあえず、今、貴方は依月さんを契さんの元に返したい、時間がかかりすぎていて悩んでいる、って辺りなんですよね」

「当たってるけど、やっぱり、盗聴器かなんかあの子に仕込んでいるよね!?」

刹那が問い詰めると、彼は笑った。

「─知らなければ幸せなこともあるんですよ」

「いやいやいや、上手いこと言ってるけど」

「あいつは何も知りません。前のことも、俺のことも覚えていないし、思い出させたくもない。それでいいんです。忘れたままで。何も知らなくていい。でも、ひとりであいつを世間に出すには、世間知らずな部分がありますし。それが不安でつけているだけですよ。主な目的としてはね。それに、盗聴器に関しては多分、気付いていますし」

「ああ、そう……」

全てを捨てさせた身だから、あの子が世間知らずなのは承知の上だし、これもふたりの形だと思えば、突っ込む気力も起きなくて。

「この半年の間、それはもう、各々が自由に依月さんへの手がかりを探しています。空間に閉じ込めておくことに限界を感じているのなら、一度、二人で出てきませんか?」

刹那は、身分がない。
だから、彼のような保証人がいて、色んなものを用意してくれるのはありがたい。

でも、人間のような生活をすれば、間違いなく、刹那は耐えられなくなる自信がある。


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