君の隣が、いちばん遠い
「どういう意味?」
「悪い意味じゃないよ。静かで落ち着いてて、でもちゃんとあったかい」
そんなふうに言われて、わたしは少しだけ顔を伏せた。
「……ありがと」
掃除が終わる頃には、空がオレンジ色に染まり始めていた。
「送ってくよ」と言った彼の言葉に、一瞬戸惑ったものの、断りきれず頷いた。
住宅街の細い道を歩き、家の角を曲がると、玄関先に制服姿の美帆ちゃんが立っていた。
「えっ──」
美帆ちゃんはわたしたちを見て、数秒間固まった。
そして次の瞬間、驚きと興奮が入り混じったような声を上げる。
「ちょ、ちょっと待って!? 誰!? 彼氏!? えっ、ひより!? え、彼氏なの!?!?」
「ち、ちがうってば……!」
わたしの顔は真っ赤だった。
一ノ瀬くんは少し笑いながら、彼女に軽く会釈をする。
「こんにちは。佐倉さんと同じクラスの一ノ瀬です」
「えっ、あ、一ノ瀬くん? こんにちは。ごめんね、うるさくて。え、でも、ひよりが男子と歩いてるなんて……!」
「……別に、そういうんじゃ……」
言葉を濁しながら焦るわたしの背後で、一ノ瀬くんが小さく「じゃあ、またね」と笑って手を振った。