君の隣が、いちばん遠い
そんな声があちこちで上がるなか、廊下を歩いていた久遠先生がふと中をのぞきこみ、
「……そういう季節だなぁ」
と、にやりと笑った。
──空き教室。
人気のない教室の隅、ふたりで机を向かい合わせてお弁当を食べる。
付き合い始めてからまだ数日。
だけど何年分の緊張をぎゅっと詰めたような時間だった。
「……あのさ」
「うん?」
「この間、マフラー、ありがとう。すごく、あったかかった」
「うん。……また寒かったら、言ってって言いたいところだけど、もう自分のあるもんな」
お互いに笑い合いながら、ふと、自然と視線が重なる。
そして、黙っていても、どこか満たされた気持ちになるのだった。
放課後、教科書を閉じて鞄にしまおうとすると、紗英ちゃんが待ってましたと言わんばかりに声をかけてきた。
「はいはい! お昼は譲ったから、放課後は私の番でしょ? 行こ」
一ノ瀬くんが苦笑しながら、「じゃ、またね」と小さく手を振って教室を出て行く。
それを見送ってから、紗英ちゃんがわたしの腕を引っ張る。
「いいから! 女子の集会、はじまりまーす!」
と手を引かれて、数人のクラスの女の子たちと教室の一角に集まる。