君の隣が、いちばん遠い
⑤ふたりの春が、始まる
春の風が頬を撫でるように優しくて、わたしはそのたびに背筋が伸びるような感覚を覚えていた。
道端にはタンポポが咲き始め、商店街のショーウィンドウには、明るい春色のポスターが貼られている。
新学期が始まり、わたしは2年生になった。
とはいえ、進学コースに進んでいるわたしたちには、クラス替えはない。
教室の風景も、席の並びも、ほとんど変わらなかった。
担任の久遠先生もそのままで、教室の空気は春の新鮮さというより、穏やかな「継続」に満ちていた。
でも、それでも、何かが変わる。
それは、一ノ瀬くんとわたしの時間の流れだった。
「文理選択、いよいよ本格的に始まるね」
わたしがそう呟くと、一ノ瀬くんはいつもの穏やかな笑顔を浮かべて頷いた。
「うん。俺は理系だし、授業で顔合わせるのは少なくなりそうだね」
「……そうだね」