君の隣が、いちばん遠い
――やっぱり、わたしは遥くんが好きだ。
わたしにとって、彼は“特別”で、“安心できる場所”で、“これからも一緒にいたい人”。
でも、白石くんの言葉が心に引っかかったままだった。
“好き”だけじゃない気持ちが、確かにそこにはあって、それがわたしを迷わせた。
再会するのが早かったら、今とは違う未来があったのかもしれない。
でも、それでも――
わたしは、遥くんの隣にいたい。
帰宅してから、リビングに寄ると、美帆ちゃんがテレビを見ながらみかんを食べていた。
「おかえり。塾、どうだった?」
「うん、まあまあ。今日で年内最後だったよ」
「ふーん……なんか、顔赤くない?」
「……そ、そんなことないよ」
焦って笑うと、美帆ちゃんはニヤリと口角を上げた。
「ふーん、へぇぇ……」
「な、なにその反応っ」
「なーんにも。さ、早くお風呂入ってきな~」
軽く肩を押されて、自分の部屋に戻った。
部屋着に着替えて、ベッドに寝転がりながら、スマホの画面を見つめる。
“もし、出会うのがもっと早かったら――”
もう一度、白石くんの言葉が脳裏に浮かんだ。
でも、それでもわたしは、この一年で育んできた想いを信じたい。
わたしの隣には、あの日、手をつないでくれた一ノ瀬くんがいる。
その想いだけは、揺らがせたくないと思った。