君の隣が、いちばん遠い

②話すことで、見えてくること



春休みの午後。

ほんの少しだけ、空気が冷たい風を含んでいた。


あたたかい春の日差しが降り注いでいるのに、胸のあたりがなかなか晴れない。

それは、たぶんずっと心のどこかで迷っているからだと思う。


学校に来たのは、課題の提出が目的だった。

でも、今はそのプリントよりもずっと気になっていることがある。


進路希望調査。


真っ白なままのあの紙が、今も心の奥でひっかかっている。


わたしは、勇気を出して階段をのぼり、職員室の前に立った。

ドア越しに聞こえる電話の声や、先生たちの話し声が、普段より近く感じて、手のひらにじんわり汗がにじんだ。


「……失礼します」


小さくドアを開けて中に入ると、すぐに久遠先生がこちらに気づいて顔を上げた。


「お、佐倉。どうした?」


先生は笑って、書類の手を止めてくれた。

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