君の隣が、いちばん遠い


「ひより、ここ、わかる?」


遥くんの声が、わたしの考えを現実に引き戻す。

図書室の机に広げられた問題集。

わたしたちは毎日のように、こうして一緒に勉強している。


「うん、これは……あ、たぶんこの公式だよね?」

「そう。式に代入するとこうなる」


彼の字でびっしり書かれたノートが視界に映る。

真面目な横顔、時折視線をこちらに向けてくるその仕草も、今では見慣れた風景。


だけど、慣れ親しんだ中にも、日々の成長と、未来への不安が折り重なっている。


放課後の図書室は、しんと静かで、ページをめくる音すら聞こえてくるようだった。


「ねえ、遥くんは、受験が終わったら最初に何したい?」


ふと、わたしはペンを置いてそう聞いた。

集中力が切れたわけじゃない。

ただ、この静けさに、ぽつりと声を落としたくなった。

< 362 / 393 >

この作品をシェア

pagetop