君の隣が、いちばん遠い


「でもさ、本当は——遊びたいんじゃないの?」


その言葉に、わたしの足がほんのわずか止まりかける。


「……え?」

「いや、なんとなく。あの日の佐倉さん、すごく楽しそうだったから」

「……そう、だったかな」


わたしは目を伏せた。

あの日の帰り、胸の奥に残っていたあたたかい感情を、まだうまく言葉にできずにいた。


「自分から、誘ってみたら?」

「……わたしが?」

「うん。たぶん、岸本も佐倉さんと遊びたいって思ってると思う。あいつ、すごくそういうの察するタイプだし」


その言葉に、わたしは小さく頷いた。


「……そう、かも」


少し照れくさそうに笑ったわたしを見て、一ノ瀬くんもふっと微笑む。


そんな言葉を交わしながら、わたしたちは角を曲がった。

そのときだった。


少し先に立つひときわ目を引く女性が、彼の名前を呼んだ。


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