君の隣が、いちばん遠い

④誰かのために笑う声



文化祭当日、朝から校舎はいつもと違う賑わいに包まれていた。

教室の装飾は昨日までに仕上げた通り、カフェのようにテーブルとイスが並び、黒板にはクラス名とメニューが描かれている。


「すごい、ちゃんとお店っぽいね」

「え、これ本当に高校の教室?」


開場直後から保護者や地域の人たちが次々と来場し、クラスのカフェには想像以上に多くの客が詰めかけていた。

わたしは、入口近くの席案内係に立っていた。慣れない接客に、最初は戸惑いを隠せなかった。


「えっと……お二人さま、ですね。こちらの席にどうぞ……」


声は控えめで、少しだけ震えている。

そんなわたしを、吉岡くんがさりげなくフォローする。


「佐倉さん、次のお客さんお願い。俺、後ろ片づけとく」

「……うん。ありがとう」


言葉数は少なくても、吉岡くんの声はどこか安心感をくれた。


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