For Myself
1時間くらい時間が経った頃、佐久間先生が病室に1人で入ってきた。もう一度ちゃんと状態を確認したいらしい。テーブルに広がったノートと参考書に先生の目がいく。



「今くらい休めばいいのに。看護師からの情報だととりあえず体調は良さそうみたいだな。朝の回診の時服の上から胸の音聞いたがもう一度聞かせてもらっていいか?」



もう断る理由もないため素直に頷く。



「喘鳴は昨日よりはだいぶ良くなっている。でも、発作は出やすくなっているから少しでも違和感があったらナースコールするように。



酸素してるからだいぶ息苦しさもないだろう?さっき、他の先生と検査の結果見て話し合って胃カメラが終わったら輸血をすることにまとまった。



貧血が改善されないと息も上がりやすくなるからな。その間はゆっくりしていて欲しい。もうそろそろ看護師が検査の迎えに来るから、御手洗とかはその時に済ませてから検査室に来てな。」



入院生活って検査も多いし、もちろん治療もされる。暇だけど何となく忙しいのだとわかった。



そういえば、妃奈ちゃんも今日、最後の検査があるって言ってたし、夏鈴ちゃんもリハビリがあるって言ってた。



一通りの診察が終わったあと、先生が参考書を見て言う。



「難しい問題を解いてるんだな。高2だろ?さすがにレベルが高いな。」



「ちょっとパラパラ見てみますか?分からない問題もあって、昨日の放課後先生に聞く予定だった問題を早めに解決したいんです。」



「時間がある時になるが勉強見てあげるよ。もう何年も前のことだから分からなかったらすまないが、腐っても医学部入学はしたからな。」



そう言って笑ってくる。佐久間先生って笑うんだ。と思ってしまった。当たり前なのかもしれないけど今まで怖いイメージしか無かったからなぁ。



その言葉を最後に部屋から出ていった。
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