頭のネジが緩いやつ!

別れ

 妹が死んだ。事故だった。それは急な事故。
 急な事故っていうのもおかしい言葉だ、事故は急に起こるものだ。
 妹を殺した奴は何か言い訳をしていた。

 天気がおかしかったと。

 確かにその日は変な天気だった。灰がふってきているような雪の色だった。空は昼から暗くなっていて雪のせいで視界が悪かった。
 
 妹がいなくなった次の日の天気は晴れだった。空はまたいつも通りの日常を過ごさせようとしてくる。俺はイラついた。

「今日はいい天気だなー悠、夏来の笑顔みたいだ。」

返す言葉はない。

「太陽ってさ明るすぎるんだよな。だから他の星も反射して光ってしまう。」
 
 お父さんは太陽が夏来に見えているのだろう、太陽に取り憑いている。

「俺らも当てられたんだろうなぁ、あの元気に。」

 何もいうことのできず固まっている俺に構わず続ける。

「夏輝がいなくなってしまってよ。失った俺たちはどうすればいいんだよ。」
 
 実際お母さんは未来がないと言った。心配した親戚は常に一緒に誰かいるようにした。

「お前はどう思ってんだ?悠」

「俺は......」
 
 言葉が詰まる。俺にだってどうしたらいいかなんてわからない。夏輝がいなくなった日常はとても暗い。

「無理に答えなくていい、悪かった。わかってたらこんな悩まないな。」
 
 大切な人がいなくなった場合、スッキリ全て解決させる解決案なんてない。しかし対処法を人間はもっているんだ。

 人は忘れていく、夏輝の笑顔、笑い声。

 ビデオに撮ってたってそれは記録をみているだけの気休めだ。

 リアル、本当の夏輝。俺たちは不可抗力的に忘れていく。

 すると人間は慣れる。俺たちも慣れていくんだろう夏輝のいない生活に。
 
 数年後

 お母さんは未来が見えないと言ったが、明日友達とご飯に行くと言った。
 お父さんはどうすればいいのかわからないと言ったが、明日も仕事に行く。
 俺は明日から高校生になる。
 夏輝を忘れたことはない。しかし思い出が消えていく。
 仏壇に今日も手を合わせる。できるだけ薄れないように、消えないように。
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