独占彼氏〜独り占めして、何が悪い〜
美女と野獣
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途中でアクセサリーショップの前を通りかかった瞬間
お前がピタッと立ち止まった
「綺麗...可愛い!!見て?アオ!
このリング、わたしの好きな美女と野獣とコラボしてる!」
目を輝かせながらショーケースを覗き込んでる
「ん?」
お前の視線を追って、隣に立って一緒に覗き込む
「へえ...これ似合いそうじゃん
キラキラしてて、ちっちゃくて...
お前の指にちょうどよさそう」
そう言いながら、お前の手を取って
薬指に俺の指を重ねる
「そのうち、本物のつけてやるから。覚悟しとけよ」
耳元でそっと囁いて
何もなかったように手を離した
「ほら、ピーマン買いに行くぞ
美女と野獣ごっこは今夜な?
...ベッドの上ででもしてやるよ」
「...っ!んもぉ
そんなごっこいらないってば
てかなによ美女と野獣ごっこって」
お前は肩をパシッと叩きながら吹き出してる
「はー?いらねぇとか言っといて顔ゆるんでるの誰?」
ほんっとわかりやすいやつ...
「じゃあさ、ごっこじゃなくて現実でいい
俺が野獣で、お前が俺だけの美女
それでいこうぜ?ずっとな」
リングに視線を戻しながら、少し温度を落として言う
「欲しいなら言えばいいのに
ほんとにお前の指につけたいって思ったよ、今」
お前の目を見て、少し真面目に伝えた
「ん、いつかはアオとお揃いで欲しいけど...
誕生日にはちょっと早いし、ましてや指輪だもんな
わたしにはまだ早いかも…!」
お前はそう言いながら心の中で呟いてるのが、なんとなく伝わる
「...えれなってさ、ほんとそういうとこ」
ポケットに手を突っ込んだまま、少し笑う
「3日後だろ?知ってるよ お前の誕生日」
「まだ早いとか勝手に決めんな
俺がつけたいって思ったら、つけさせろっての」
手を取って、指を一本ずつゆっくりなぞる
「その細い指に、俺が選んだやつつけてやる
いいだろ?...じゃなくて、決まりな」
「...誕生日、覚悟しとけよ
全部、俺の好きにさせろ」
「へ?ほんとに?...嬉しい
アオ、ありがとね」
照れた顔でお礼を言いながら、スーパーに向かって歩き出すお前を横目で見る
「ん?照れんの早すぎだろ」
スーパーの入口で耳元に顔を近づける
「まだ指輪の話しかしてねぇのに、そんな顔して...
本番はこれからだっつーの」
囁いてからさらっとカゴを手に持つ
「で?ピーマンは絶対なんだろ?
肉は豚か牛か、どっちの気分だよ姫さんよ」
「っ...!えっと、うん!ピーマンは絶対!
お肉は今日は...牛肉食べたい気分!」
駆け寄ってきて、また手を握ってくるお前がほんと愛しすぎる
「何その言い方、かわいすぎて買い物どころじゃねぇんだけど」
カゴを片手に店内を見渡しながら言う
「じゃあピーマンと豚肉な
あとは...えれながおいしい〜!って顔するもん全部」
耳元でそっと低く囁く
「期待しとけ 今夜絶対泣かせるからさ。
...焼肉のうまさでな?」
おい、勘違いすんなよ?
「っ...!アオさん
そろそろ口にガムテープはってもいいですか?」
そう言いながら、ガムテを手に取って俺を睨む
「何?やんの?笑
貼れよな。でもその代わり...口使えねぇ分
覚えとけよ」
ニヤッと笑って腰を軽く引き寄せ、耳元で息をふっと吹きかける
「貼った瞬間、後悔すんなよ?」
そしてパッと離れて歩き出す
「ほら、ガムテよりピーマンの方が大事だろ〜?」
「もう!アオといるといつもいつも調子狂っちゃう!!」
お前は叫びながら、ピーマンをカゴに入れてレジへ向かう
「いいじゃん 調子くらい狂わされとけって」
レジ横で腕組んで、じっと見下ろしながら囁く
「俺以外に狂わされんなよ?
てか、ピーマン入れてくれてありがとな」
低く甘く耳打ちしてから、さらっとカゴを持って会計を済ませる
「ほら、帰るぞ 晩メシ冷める前にな」
「へ?なんでピーマン入れてくれてありがとうなの?笑
しかも、晩飯冷める前にって...
焼肉は食べる前に焼くんだから冷めないよ?」
「うるせぇな」
肩をすくめて笑いながら、お前の頭をクシャっと撫でる
「ピーマンはさ、お前が好きなもんだから
それ一緒に食えるってのが嬉しいって意味」
「冷めるとか関係ねぇの 気持ちの問題な」
顔を近づけ、目をそらさずにニヤッと笑う
「ばぁーか。そういうとこ鈍いんだよな
...でもそこがたまんねぇのよ えれなって」
手を繋いだまま、ゆっくり歩いてアオの家へ向かう
帰り道
また他愛もない会話をしながら、ふたりはアオの家に到着した
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