最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―

菜亜side


「……はぁ」

 

スマホの画面を伏せたまま
校舎裏のベンチで、静かに息を吐いた

 

今日が、誕生日

クラスの友達には
「おめでとう」って何度も言ってもらったし
小さなプレゼントも、いくつかもらった

 

でも
本当に待ってたのは
“ひとりだけ”だった

 

悠

 

 

何か言ってくれるんじゃないか
どこかでサプライズみたいに声をかけてくるんじゃないか

そんな期待ばっかり
頭の中で何回もリピートしてるのに

放課後になっても
彼の姿は見えなかった

 

 

「……私、なにやってんだろ」

ベンチの上に膝を抱えて
小さくつぶやいた声は、風に消えた

 

ほんとは
期待なんてしなきゃよかったのに

“あの子”といるのを見た時
ちゃんと終わらせておけばよかったのに

 

それでも

「悠が……来てくれるって、信じたいの」

 

ぽつりと口からこぼれた本音は
予想よりずっと震えてて

自分でびっくりした

 

 

スマホの画面には通知がない
時間だけが、淡々と進んでく

「……もう少しだけ」

そう言って、目を閉じた

 

信じたい
でも、怖い

それでも
“待つ”ってことを選んだ自分が
少しだけ、誇らしくて

ちょっとだけ、泣きそうだった
< 27 / 56 >

この作品をシェア

pagetop