報復を最愛の君と
***


その夜、私は寝床を抜け出してセレストの部屋に向かっていた。


宴が終わる頃——。


『夜にボクの寝床においでよ。話をしよう』


まるで、私の心を読んだみたいな言動だった。


そういえば、初めて会った時もそんな感じだったな。


そんなことを考え、私は少し警戒しながらセレストの部屋のドアをノックした。


コンコン。


「ヒメアだよ。入ってもいいかな?」


「どうぞ」


すぐに返事がきたので、私はドアを開けて部屋に入った。


部屋に入ると、セレストは初めて会った時と同じように窓のところに立っていた。


天竜だから風が好きなのかな?


そう思いながら、私はセレストに近づいた。


「ああ、ごめん。そこにイスに座りなよ。お茶でも出すね」


そう言ってキッチンの方へ行ってしまった。


私はやることもなく、おとなしくイスに座った。


その間に部屋を見回してみる。


なんだか寂しい部屋。


初めに思ったのは、それだった。


ほとんど飾りもなく最低限の家具しか置かれていないこの部屋は、大きいせいもあるのか寂しく見えて仕方なかった。


そして、セレストがお茶入りのカップをふたつ持って戻ってきた。


それを私の前に丁寧に置く。


「はい、どうぞ。紅茶は嫌いじゃないかな?」


「うん。大丈夫だよ、ありがとう」


そう言って、私はひとくち紅茶を飲んだ。


少し苦い紅茶の味が、とても好きなんだ。


そしてセレストが言った。


「ヒメア、単刀直入に聞かせてもらうけど君たちがここに来たのはなぜ?ボクもそれがわからないんだよね。民をおびやかす存在じゃないのはわかってるんだけど…」


私は少し考えてからこう言った。


「私の質問に答えてくれたら、教えてあげる」


私だけ素直に質問に答えるのはよくないと、直感で思った。


そして、セレストは少しの間黙り込む。


それから笑顔で頷いた。


「うん、いいよ。答えてあげる」


「ありがとう。じゃあ、失礼かもだけど質問するね。セレスト、あなたは初代人魚を殺したの?」


セレストは笑顔を崩さず、食いつくように言った。


「なぜ、そんな質問を?」


その笑顔はさっきと違って、深い闇を感じさせた。


セレストはやっぱりなにかを隠してる。


それはきっと、私達の想像を超える何か大きなもの——。


「聞いているのはこっちだよ。質問を質問で返さないで」


「…わかった」


それから、セレストはとんでもない発言をした。


「たしかにボクとセランはカノンを永久の眠りにつかせたよ。でも、間違ったことはなにもしてない。カノンは死んで当然だったんだ」


「どう…して」


私は震えが止まらなかった。


——恐ろしい人。


いや、セレストはそんな言葉じゃ表せない。


闇そのものだ。


でも、どこか違和感を感じる。


「どうしてって、わからないの?カノンは理不尽に能力者を殺す人間も生かしたんだ。ありえないよ!カノンは何にもわかっちゃいない!人間共は最低で最悪な生き物で、この世に存在してはいけないんだ。なぜ守る必要がある?ボク達は神なんだよ?害悪な生き物は殺し、自然に戻すんだ。それが普通だよ。ヒメアも同じ人間を恨んでるんだろ?ならわかるはずだよ」


たしかに私は人間が嫌い。


でも、使用人達とは違う人間もいた。


ソラやスイは私を呪いとして扱わず、“ヒメア”として私を見てくれた。


私達は神なんかじゃないし、呪いでもない。


「違う、間違ってるよそんなの…」


その時、セレストの表情が一気に崩れた。
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