Good day ! 4【書籍化】
「あっ、佐倉(さくら)キャプテン! ちょうどいいところに」

コックピットに行くと、広報課の川原(かわはら)が大和を見て笑いかける。

「今、お子さまの記念撮影していたんです。よかったらキャプテン席に座っていただけませんか?」
「えっ、いや、お子さんとご家族だけで撮った方が……」

大和がそう言うが、既に男の子と両親は「パイロットだ!」と目を輝かせている。
恵真は後ろからそっと翼と舞に声をかけた。

「翼、舞。ちょっとだけここで待ってようか」
「うん」

恵真が二人と手を繋いで下がり、大和は左席に座る。
右席に男の子が座り、両親が座席の後ろでしゃがんでポーズを取った。

「こっちを振り返ってくださいね。撮りますよ。はい、チーズ!」

川原がシャッターを押し、何枚か撮影する。

「ありがとうございました!」

笑顔でコックピットをあとにする家族を見送ると、大和は翼と舞を呼んだ。

「二人とも、好きな方に座っていいぞ」
「え、ここにすわってもいいの?」

翼は目を輝かせるが、舞はおっかなびっくりの様子だった。

「おとうさん、すわったらとんじゃうんじゃない?」
「ははっ! 舞、座っただけでは飛ばないよ。それで飛んだらパイロットも楽でいいけどな」

確かに、と恵真も笑う。

「実際には、ここにあるスイッチやボタンを全部使って飛ぶんだよ」
「えーっ、こんなにたくさん?」
「そうだよ」

翼はわくわくした様子で興味津々に身を乗り出すが、舞は圧倒されたように上を見上げている。

「おとうさん、これをつかってひこうきをとばしてるの?」
「そうだよ。お母さんもね」
「しんじられない。まほうつかいみたいね」

恵真は思わず、ふふっと笑う。
ハイテク技術を駆使した飛行機が、舞の頭の中ではメルヘンな乗り物になっているのが微笑ましかった。

(舞は将来、何になりたいのかな)

ふとそんなことが恵真の頭をよぎる。

「さあ、次は佐倉ファミリーを撮りますよ。ほら、翼くんも舞ちゃんも、座って」

川原が二人を促し、翼が左席に、舞が右席に座って写真を撮る。

「じゃあ今度は4人でね」

大和が翼を、恵真が舞を膝の上に座らせて4人で撮ってもらった。

「川原さん、ありがとうございました」
「いいえー。将来どんな家族になるのかしらね。また4人でコックピットで撮りましょう。その時は、みんな制服姿かしら?」

そう言って川原は、意味ありげに恵真に笑ってみせた。
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