Good day ! 4【書籍化】
無事に巡航に入り、しばらくした時だった。
大和がふと身を乗り出す。

「恵真、見て。ブロッケン現象だ」
「えっ」

恵真は大和の視線の先を追う。
飛行機の影が雲に映り、その周囲に虹色の光の輪が現れていた。

「本当だ、きれい……」
「ああ。ここまで見事な光は初めて見る」
「私もです」

正式には「光輪(グローリー)」と呼ばれる珍しい大気現象。
飛行機の影の周りを七色の虹が彩り、見ると幸せになれると言われている神秘的な光景。
それはまるで、翼と舞の前途を祝福してくれるかのようだった。

「1つとして同じフライトはない、私はいつもそう思っています。今日のフライトも、決して忘れることはありません」
「ああ、そうだな。俺はなんて幸せなパイロットだろう。大切な子どもたちを、自分の飛行機で夢の出発地点へと送り届けることが出来るんだ。心から愛する恵真と一緒に」
「大和さん……」

恵真の胸に、色んな想いが込み上げる。
寂しくて、幸せで、嬉しくて、切ない。
言葉に出来ない恵真の気持ちを、大和は全て受け止めた。

「恵真、俺はずっとそばにいる。これからも二人で翼と舞を見守っていこう。俺たち二人で、あの子たちの道しるべとなるように」
「はい、大和さん」

涙を堪えて頷くと、大和は愛おしそうに恵真に微笑んだ。

(大丈夫、私たち家族が羽ばたく先には、いつも青空が広がっている。何があっても、大和さんが大きな愛で包み込んでくれる。これからもずっとずっと、幸せでいられますように……)

恵真は輝く七色の光の輪にそう願い、もう一度大和と微笑み合った。
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