Good day ! 4【書籍化】
「恵真、紅茶淹れるから座ってて」

夕食の後片付けが終わり、双子が寝室で眠ると、大和は恵真をソファに促した。

「はい、ミルクティー。今日も一日お疲れ様」
「ありがとう。大和さんも」

二人で微笑み合い、ゆっくりと紅茶を味わう。
子どもたちが生まれたあとも大切にしている、二人だけの時間。

やがて大和が静かに切り出した。

「恵真、今日はどうだった?」
「とっても楽しかったです。子どもたちも、ようやくファミリーデーを楽しめる年頃になって、成長したなって。あ! そうだ。舞のCAのお仕事体験、こずえちゃんが動画撮ってくれてたの」

そう言うと早速動画を再生し、二人でスマートフォンを覗き込んだ。

「おお、しっかりしてるな、舞」
「ええ。あの子はなんでもそつなくこなすタイプだから。でも……」

うつむいて何かを考え始めた恵真の言葉を、大和は黙って待つ。

「舞、本当はパイロットをやりたかったのかもしれません。翼と大和さんのことをじっと見ていたから。翔一くんに誘われた時も、私が『パイロットやってみる?』って聞いた時も首を振っていたけど、自信がなかったからかもしれません」
「……そう」
「舞は、ちゃんと出来るのにやる前からあれこれ考え過ぎて、躊躇してしまうことがよくありますよね。もっと自信が持てたらいいのに……。来月から小学校で、勉強ややることも増えるから、ちょっと心配なんです」
「そうか」

大和はローテーブルにカップを置くと、恵真の肩を抱き寄せた。

「恵真、ちゃんと舞のことを見ていてくれてありがとう。舞は、確かに慎重な性格だし、何でも身構えずにやってみる翼とは違う。でもそれは舞の個性だ。俺はそのままでいいと思う。ただ、舞自身が変わりたいと思っているなら、支えてやりたい」
「そうですね」
「大人も子どもも、みんな悩みながら少しずつ成長していく。舞も今、成長の節目で悩みを抱えているのかもしれない。だけど恵真がちゃんと見ていてくれて、どんな時も味方でいてくれる。これは舞にとって大きな心の支えだ。きっと大丈夫だと安心すると思うし、舞なら必ず乗り越えられる」
「そうだといいですけど……」

大和は明るく恵真に笑いかけた。

「俺が保証する。なんたって舞は、恵真の子だからな。一見か弱そうでおとなしそうなのに、中身は頑固で男前。どんな状況でも冷静に飛行機を飛ばす、肝の据わったバリバリのパイロットだぞ?」
「ちょっ、大和さん。それ、褒めてるの? からかってるの?」
「最大級に褒めてる。それにこの俺が選んだ、世界でたった一人の奥さんだぞ? 可愛くて優しくて、子どもたちには最高のお母さんで、パイロットとしては誰よりも頼りになる。公私ともに、俺の唯一無二のパートナーだ」
「大和さん……」
「だから舞もきっと大丈夫だ。信じよう、あの子を」
「はい」

目を潤ませて頷く恵真に優しく微笑み、大和はそっと両腕で抱きしめた。
恵真の心に温かさと幸せが広がる。
コツンと大和の肩に頭を預けると、恵真はしみじみと呟いた。

「大和さんも、子どもたちにとって最高のお父さんです。それに、私にとっても……」
「ん? 私にとっても、なに?」
「えっと、だからそれは……」

赤くなる恵真の顔を、大和は、ん?と覗き込む。

「大和さん、おもしろがってるでしょ?」
「いいや? 真面目に聞いている」
「嘘だもん」
「ほんとだって。俺は恵真にとって何だろうな。空気みたいな単なる同居人?」
「まさか、そんな訳ないです。大和さんは私の大好きな人。大和さんがいてくれるから、どんな時も私は幸せでいられるの。あなたは世界でたった一人の、私が心から愛する人です」
「恵真……」

たまらず大和は、恵真をもう一度ギュッと胸に抱きしめる。

「俺もだよ。恵真が俺の人生の全てだ。俺の喜びも幸せも、全部恵真と共にある。ありがとう、恵真。これからもずっとそばにいてほしい」
「はい。私も、この先もずっと大和さんと一緒にいたい。どんな時もそばにいさせてください、大和さん」
「ああ。いつまでも一緒だ、恵真」

大和の大きな手が恵真の頬を包む。
見つめ合うと、どちらからともなく顔を寄せ、愛を込めてキスをした。
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