野いちご源氏物語 二一 乙女(おとめ)
新年になった。
入道の宮様の一周忌が過ぎると、世の中は喪服を脱いで鮮やかになっていったわ。
賀茂神社のお祭りがはじまった。
新緑のさわやかな季節、心地よいお天気だというのに、朝顔の姫君はぼんやりと物思いをしておられる。
入道の宮様につづいてお亡くなりになった父宮の一周忌が終わって、心細さが増しておられるの。
そこへ源氏の君からお手紙が届いた。
「ご自分が賀茂神社の斎院におなりになったころを、懐かしく思い出していらっしゃいますか。あのときは神様にお仕えなさるための儀式でしたが、同じ身を清める儀式といっても、父宮の喪が明ける儀式はおつらかったことでしょう」
紫色の紙に書かれたお手紙が、きちんとした雰囲気で藤の花に添えてある。
姫君は父宮のことを悲しく思い出しておられるときだったから、お返事をお書きになった。
「父宮がお亡くなりになったのは昨日のことのようですのに、もう喪服を脱ぐなんて世の中は儚いものでございます」
というだけのお手紙だったけれど、源氏の君はまた大切そうにご覧になっている。
源氏の君はお手紙と一緒に、喪服から着替えるための新しいお着物をたくさん姫君にお贈りになった。
<浮ついた恋文がついていれば、「お気持ちにお応えするつもりはない」と言って着物も返してしまえるけれど、きちんとしたお手紙だからどうしたらよいものか>
と悩んでしまわれる。
長年、真面目な文通はなさってきたご関係だから、かえってお断りもしづらいのよね。
入道の宮様の一周忌が過ぎると、世の中は喪服を脱いで鮮やかになっていったわ。
賀茂神社のお祭りがはじまった。
新緑のさわやかな季節、心地よいお天気だというのに、朝顔の姫君はぼんやりと物思いをしておられる。
入道の宮様につづいてお亡くなりになった父宮の一周忌が終わって、心細さが増しておられるの。
そこへ源氏の君からお手紙が届いた。
「ご自分が賀茂神社の斎院におなりになったころを、懐かしく思い出していらっしゃいますか。あのときは神様にお仕えなさるための儀式でしたが、同じ身を清める儀式といっても、父宮の喪が明ける儀式はおつらかったことでしょう」
紫色の紙に書かれたお手紙が、きちんとした雰囲気で藤の花に添えてある。
姫君は父宮のことを悲しく思い出しておられるときだったから、お返事をお書きになった。
「父宮がお亡くなりになったのは昨日のことのようですのに、もう喪服を脱ぐなんて世の中は儚いものでございます」
というだけのお手紙だったけれど、源氏の君はまた大切そうにご覧になっている。
源氏の君はお手紙と一緒に、喪服から着替えるための新しいお着物をたくさん姫君にお贈りになった。
<浮ついた恋文がついていれば、「お気持ちにお応えするつもりはない」と言って着物も返してしまえるけれど、きちんとしたお手紙だからどうしたらよいものか>
と悩んでしまわれる。
長年、真面目な文通はなさってきたご関係だから、かえってお断りもしづらいのよね。