ホラー短編集
赤い部屋の肉
ユウトはネットの闇にハマっていた。
深夜の匿名掲示板で、誰もが囁く都市伝説「赤い部屋のポップアップ」を見つけた。
噂はこうだ。
あるリンクをクリックすると、血のような赤いポップアップが現れ、「閉じますか?」と聞かれる。
「はい」でも「いいえ」でも、選んだ者は血に塗れた部屋に引きずり込まれ、二度と戻らない。
ユウトは鼻で笑った。
こんな古臭いチェーンメール、怖がるやつがいるのか。
彼はスレッドに貼られたリンクを、好奇心だけでクリックした。
画面が真っ黒になり、スピーカーから水が滴るような音が響いた。
ぽたぽた。
ぽたぽた。
モニターに赤いポップアップが浮かんだ。
血が滲むような背景に、白い文字で「閉じますか?」。
ボタンは「はい」と「いいえ」。
ユウトはスクリーンショットを撮ろうとしたが、パソコンがフリーズした。
部屋の電気がちらつき、背後で何かが動く気配がした。
振り返っても誰もいない。
だが、床に赤い染みが広がっていた。
まるで血がじわじわと滲み出しているように。
「ユウト…選んで」女の声がスピーカーから漏れた。
低く、粘つく声。
ユウトの名前を知っているはずがない。
彼は震えながらマウスを動かし、「いいえ」をクリックしようとした。
だが、カーソルが勝手に「はい」に滑り、クリック音が部屋に響いた。
瞬間、モニターから血が噴き出した。
赤黒い液体がユウトの顔を濡らし、鉄の臭いが鼻をついた。
彼は悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちた。
部屋の壁が脈打った。
ドクドクと、心臓の鼓動のように。
床の染みが広がり、ユウトの足を絡め取った。
血だ。
温かく、粘り気のある本物の血。
ドアに走ったが、ノブは溶けた肉の塊に変わっていた。
窓は赤い膜で覆われ、叩いてもびくともしない。
「ユウト、好き?」女の声が部屋中に響いた。
モニターに顔が浮かんだ。
目がなく、鼻がなく、口だけが耳まで裂けている。
唇から血が滴り、歯がギザギザに並んでいた。
ユウトが後ずさると、床から肉の塊が這い上がってきた。
人間の手の形だったが、指は骨がむき出しで、爪が剥がれていた。
それがユウトの足首を掴み、皮膚を裂いた。
血が噴き、彼の叫び声が部屋にこだました。
モニターの女が笑った。
「ユウト、もっと赤くしてあげる」
彼女の口が画面を突き破り、部屋に現れた。
実体化した彼女の体は、肉と骨が溶け合った塊だった。
顔の裂けた口から、血まみれの舌が伸び、ユウトの頬をなめた。
彼はナイフを手に抵抗しようとしたが、彼女の手がユウトの腕を握りつぶした。
骨が砕ける音が響き、肉が破れ、血が床に飛び散った。
「好き? 好き?」彼女は繰り返し、ユウトの腹に爪を突き立てた。
内臓が引きずり出され、赤い部屋に新たな色を加えた。
ユウトの視界が赤く染まり、意識が薄れる中、彼女の口がさらに開いた。
その中には、血と肉に埋もれた無数の顔が叫んでいた。
すべて、かつてリンクをクリックした者たちだった。
翌朝、ユウトのアパートは静かだった。
部屋の壁は赤く塗られ、床は血の海だった。
パソコンのモニターは真っ黒で、ただ一つのポップアップが点滅していた。
「閉じますか?」
隣人は異臭に気づき警察を呼んだが、ユウトの体は見つからなかった。
代わりに、壁に新しい肉の塊が貼りついていた。
ユウトの顔の形をしていたが、目はくり抜かれ、口は裂けて笑っていた。
掲示板のリンクは消えていた。
だが数日後、別のフォーラムに同じリンクが現れた。
「赤い部屋のポップアップ。絶対にクリックするな」
書き込みの最後には、ユウトの名前と一言。
「彼は赤くなった。次はお前だ」
今モニターの向こうで、彼女が待っている。
血の滴る口で、あなたの名前を呼んでいる。
深夜の匿名掲示板で、誰もが囁く都市伝説「赤い部屋のポップアップ」を見つけた。
噂はこうだ。
あるリンクをクリックすると、血のような赤いポップアップが現れ、「閉じますか?」と聞かれる。
「はい」でも「いいえ」でも、選んだ者は血に塗れた部屋に引きずり込まれ、二度と戻らない。
ユウトは鼻で笑った。
こんな古臭いチェーンメール、怖がるやつがいるのか。
彼はスレッドに貼られたリンクを、好奇心だけでクリックした。
画面が真っ黒になり、スピーカーから水が滴るような音が響いた。
ぽたぽた。
ぽたぽた。
モニターに赤いポップアップが浮かんだ。
血が滲むような背景に、白い文字で「閉じますか?」。
ボタンは「はい」と「いいえ」。
ユウトはスクリーンショットを撮ろうとしたが、パソコンがフリーズした。
部屋の電気がちらつき、背後で何かが動く気配がした。
振り返っても誰もいない。
だが、床に赤い染みが広がっていた。
まるで血がじわじわと滲み出しているように。
「ユウト…選んで」女の声がスピーカーから漏れた。
低く、粘つく声。
ユウトの名前を知っているはずがない。
彼は震えながらマウスを動かし、「いいえ」をクリックしようとした。
だが、カーソルが勝手に「はい」に滑り、クリック音が部屋に響いた。
瞬間、モニターから血が噴き出した。
赤黒い液体がユウトの顔を濡らし、鉄の臭いが鼻をついた。
彼は悲鳴を上げ、椅子から転げ落ちた。
部屋の壁が脈打った。
ドクドクと、心臓の鼓動のように。
床の染みが広がり、ユウトの足を絡め取った。
血だ。
温かく、粘り気のある本物の血。
ドアに走ったが、ノブは溶けた肉の塊に変わっていた。
窓は赤い膜で覆われ、叩いてもびくともしない。
「ユウト、好き?」女の声が部屋中に響いた。
モニターに顔が浮かんだ。
目がなく、鼻がなく、口だけが耳まで裂けている。
唇から血が滴り、歯がギザギザに並んでいた。
ユウトが後ずさると、床から肉の塊が這い上がってきた。
人間の手の形だったが、指は骨がむき出しで、爪が剥がれていた。
それがユウトの足首を掴み、皮膚を裂いた。
血が噴き、彼の叫び声が部屋にこだました。
モニターの女が笑った。
「ユウト、もっと赤くしてあげる」
彼女の口が画面を突き破り、部屋に現れた。
実体化した彼女の体は、肉と骨が溶け合った塊だった。
顔の裂けた口から、血まみれの舌が伸び、ユウトの頬をなめた。
彼はナイフを手に抵抗しようとしたが、彼女の手がユウトの腕を握りつぶした。
骨が砕ける音が響き、肉が破れ、血が床に飛び散った。
「好き? 好き?」彼女は繰り返し、ユウトの腹に爪を突き立てた。
内臓が引きずり出され、赤い部屋に新たな色を加えた。
ユウトの視界が赤く染まり、意識が薄れる中、彼女の口がさらに開いた。
その中には、血と肉に埋もれた無数の顔が叫んでいた。
すべて、かつてリンクをクリックした者たちだった。
翌朝、ユウトのアパートは静かだった。
部屋の壁は赤く塗られ、床は血の海だった。
パソコンのモニターは真っ黒で、ただ一つのポップアップが点滅していた。
「閉じますか?」
隣人は異臭に気づき警察を呼んだが、ユウトの体は見つからなかった。
代わりに、壁に新しい肉の塊が貼りついていた。
ユウトの顔の形をしていたが、目はくり抜かれ、口は裂けて笑っていた。
掲示板のリンクは消えていた。
だが数日後、別のフォーラムに同じリンクが現れた。
「赤い部屋のポップアップ。絶対にクリックするな」
書き込みの最後には、ユウトの名前と一言。
「彼は赤くなった。次はお前だ」
今モニターの向こうで、彼女が待っている。
血の滴る口で、あなたの名前を呼んでいる。