双つの恋、選んだのは君だった
第5章
揺れる選択
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週明けの講義後――
帰り道、偶然樹先輩とタイミングが合った
「紬ちゃん、良かったら今日一緒に帰らない?」
「……はい!」
胸がふわっとあたたかくなる
並んで歩く帰り道は
やっぱり落ち着く
「最近、響がまた調子乗ってない?」
「……い、いえ…大丈夫です」
先輩は優しく微笑んだまま続けた
「困ったことがあったら遠慮なく言ってね」
その言葉にまた心臓が跳ねる
「……ありがとうございます」
ふと、少しだけ間を置いて先輩が続けた
「紬ちゃんとこうやって帰るの…俺、けっこう楽しみなんだよね」
ドクン――
急に言われたその言葉が胸に響く
「……え…?」
「毎回じゃなくても、たまにこうして帰れると嬉しいなって」
「……私も……嬉しいです」
顔が自然と熱くなるのが分かった
(…先輩、やっぱり特別…)
そう思いながら歩いていたその時だった
後ろから聞き慣れた低い声が飛んでくる
「お前ら、ほんと仲良いな」
振り返ると響が少し離れたところから歩いてきた
「響…帰りか?」
「今日も兄貴独占中か?」
「……べ、別に…!」
「紬ちゃん は、ほんと兄貴に甘いな」
意地悪そうに響が微笑む
「やめろよ響」
樹先輩が軽く苦笑して響に注意を入れる
「だってさ…
兄貴のこと好きなんじゃねぇの?」
ドクン――
いきなりの直球に、わたしの顔が真っ赤になる
「ひ、響…!」
樹先輩が少しだけ響を睨んだ
「言いすぎだよ」
「ごめんごめん。
けど、俺はちゃんと気になってんだよ。
お前が誰にドキドキしてんのか」
耳元で囁くように言われたその瞬間――
また心臓が跳ねた
(……意地悪…)
でも、その声も距離感も
全部が心をかき乱してくる__
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