過つは彼の性、許すは我の心 弐
獅帥君は匡獅さんの仕事の手伝いが出来ても、成人していない獅帥君じゃどうにも対応しきれない部分があるのでって事らしい。
その長女さんは、天條とは関係の無い仕事をしているから、普段はこのお屋敷には住んでいないので、昨日慌てて仕事場から直帰。
そして、颯爽と今後の指示を使用人達に飛ばしたり、各所と連絡を取り合ったりと、フル稼働しているらしい。
一応ご挨拶を…と思ったが、妃帥ちゃんを診察しに来た圭三郎さんから、今は本館は慌ただしいので、行かない方が良いと言われた。
『元々お忙しい方です。仕事に集中している時は声をお掛けになると叱責されてしまうかもしれませんので、折を見て私の方から伝えておきます』
『ありがとうございます。あの、』
『どうされました?』
『…そのお姉さんは、妃帥ちゃん達に会いに来ないんですか?』
下の兄妹2人が事件を目撃して、その上妹は病に伏せているのだから、顔ぐらい見に来ても…なんて淡い期待は、
『…』
圭三郎さんの困った様な笑みに、芽吹く前に摘まれた。
匡獅さんやお姉さん…いいやこの家の価値観では、人が死んでも家族が病気になっても、一緒の事なんだなあと落胆してしまった。
幾ら家の事情があるからと言って、冷た過ぎないか。
きっと事情が…なんて思っていたけれど、こうモヤモヤが凄い。かつてない。