親友(ヤロー)が寝言で俺に愛を囁くしキスしてくるんですが!?



 学校を終え、親友の平山翔矢(ひらやましょうや)といつものように下らない話をしながら下校する。

「なー(あきら)、今日もお前ん家遊びに行っていい?」
「おーいいよ」

 そう言って翔矢は、そのまま俺と並んで俺ん家に向かう。家に着き、俺が家のドアを開けると「ただいま~」と言って、あたかも自分の家かのようにずかずかと入り、翔矢は俺の部屋にまっすぐに向かった。
 まあ、翔矢(こいつ)はほとんど毎日のように俺ん家に来てるし、夕飯食べてそのまま泊まっていくっていうのもよくあることだし。俺の両親もこいつのことを気に入ってるから、こいつがどんだけ家にいても怒らないし、寧ろ大歓迎って感じだし。何て言うかもう、こいつとは家族みたいな感じになりつつある。



「なー翔矢、今日どうする?泊まるか──って、既に寝てるし……」

 今日も当たり前のように翔矢と俺の両親とで夕飯を食べ、夕飯後俺は風呂に入った。風呂から上がって部屋に行くと、翔矢は俺のベッドの真ん中で大の字になってグースカ寝てた。

「おい、寝るなら風呂入ってから寝ろよ」

 俺は翔矢の体を揺らしながら言う。すると翔矢はごろんと俺の方に寝返りを打ち、ぱちりとうっすら目蓋を開いた。

「おはようございます、翔矢君」

 と、ため息まじりに俺が冗談でそう言うと。翔矢はふにゃっと笑い。

「おはよ~」

 と言いながら、俺の方に手を伸ばしたかと思ったら、俺の頬に優しく手を添え──そして。


 チュッ。


 唇に触れる、柔らかいもの。
 女の子とまだそういうことしたことないけど……これはそれだ、唇と唇を重ねるやつ──そう、キスだ。

 ──ドンッ!

 キスされて思考が止まり数秒後。俺は無言で翔矢の体を押し飛ばした。すると。

「なんだよあきらぁ~朝の挨拶じゃん。照れるなよ~。やっと……結婚できたのに。好きだよ……彰。愛してる、よ……」

 そういって翔矢は目蓋を閉じ、ぐおーっと鼾をかいた。


 唇に手の甲を乗せ、ベッド横で内股気味に腰を抜かしたまま、俺は放心状態でいた。

 ……は?今のなに?結婚?俺と翔矢が??好き?愛してる??いや、今の完全に寝言……だよな?だとしても……おかしいだろ!?
 なんで俺が翔矢と結婚しないといけないんだよ!てか、こいつどんな夢見てんだよ!!

 …………
 
「……俺はこいつを抱く方か?それとも俺は、抱かれる方か?」

 そう、ポツリと言うと俺はハッとして。

 ──って、なに考えてるんだ俺は!?


 翔矢の変な寝言のせいで、俺はひとり眠れぬ夜を過ごすことになったのだった……





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