28歳のシンデレラ
Cinderella:4
童話に登場する美しい姫君達は、大変だったと思う。

みな、恋の病にかかっているもの。

その姫君達の中でも、わたしはシンデレラが一番大好きだ。

それは、もうずっと、幼い幼少時代から変わらない。

白雪姫よりも、親指姫よりも、どんな姫君よりもすきだった。

わたしはピンク色のワンピースが好だ。

幼い頃から、ずっと、だ。

何か特別な日には、必ず、ピンク色のワンピースを、わたしは着る習慣があった。

シンデレラになれるかもしれない、そんな期待を持っていたからだ。

この歳になると、さすがに笑い話だ。

あれから一年後のクリスマスイヴに、わたしは二十六歳になっていて、また一つ歳をとっていた。

あのクリスマスツリーの下で、一年前と同じ服装をして、日付が変わる瞬間まで、わたしは隼を待っていた。

しかし、隼が現れることは無かった。

自分でも驚いたけれど、ひどく落ち込むほど悲しくはなかった。

普段の生活の方が辛かったからだ。

隼に会いたくて、仕事を休んでしまうくらい体調が悪くなる日もあった。

そんなわたしを見かねて、こんな事を言ったのは、会社で一番気の合う同僚だった。

「これは大変だわ。病気よ。病名は、恋煩い、ね」

病気に行っても無駄よ、現代の医学では効く薬がないもの、そう言って同僚は笑っていた。

それから更に二年の歳月を独り身で過ごし、わたしは二十八になっていた。

あれから、風の噂で、亘と環奈は結婚をして、今は離婚済みだ、と聴いた。

原因は、亘の浮気らしかった。

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