28歳のシンデレラ
クリスマスツリーを囲む恋人達が、そわそわし、賑やかにはしゃいでいた。

クリスマスツリーから溢れるイルミネーションに、照らされながら落ちて来る細雪が、今年の初雪なのだから。

大通りを世話しなく人が行き交う、クリスマスイヴの夜。

わたしは三年という長い時を経て、赤い糸で結ばれていた、ミラノから戻ったばかりの恋人の胸に、初めて飛び込んだ。

隼の胸の中ほど温かく安心できる居場所は、この先見つける事はないのだろう。

森林のような清らかな香りに包まれながら、わたしは子供のように泣いた。

「三年間、毎日泣いて暮らしていたのよ」

「知っていたよ」

隼は言い、わたしの泣き顔に何度も口付けを繰り返した。

「真央さんが泣いてばかりいたこと、ぼくは知ってる」

「どうして?ミラノにいたくせに」

「ぼくはテレパスだからね。でも、もう、この能力を使わなくても済みそうだ」

わたしの頭上で、隼がクスクス笑っているのが分かった。

「真央さん、食事に行こうか。それで、三年間分の話をしよう」

「ええ、そうね。でも、今日一日じゃ足りないわ。きっと」

「そうしたら、一生かかって教えてくれたらいい。ぼくの知らなかった、真央さんの三年間を」

「つまらないと思うわよ」

「覚悟はできてるさ」

わたしと隼は手を繋いで、あの喫茶店へ向かうのだろう。

三年前のクリスマスイヴ、初めて食事をしたアンティークチックな、喫茶店に。

そして、スパゲッティーナポリタン、と、コーラを注文するに違いない。

レモングラスの香りがする、しゅわしゅわ弾ける炭酸水を。

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