年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
そこで絶対にろくなことではないと悟り、今すぐここから出ていきたくなるのを耐える。

『見合いをしろ。お前もようやく家族の役に立てるんだ。うれしいだろう?』

『……どういうことですか?』

やっとの思いで声を絞り出したが、言葉のままだということはわかっている。 

『だから見合いだ。嫁にいけるんだぞ。うれしいだろ』
 
うれしいわけがない。私が即答しなかったことで、上機嫌だった父の表情が険しいものに変わる。

「不服でもあるのか? 沙羅のように役に立つ人間ならともかく、お前は何もできないんだから、家のためになることぐらいするべきだろう」

いつかは言われるかもしれないと覚悟していたはずなのに、いざその瞬間が訪れると、喉がひどく渇いて、言葉が出てこなかった。

どれだけ時間が経っても、私は父の前では何ひとつ素直に話せない。

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