練習しよっか ―キミとは演技じゃいられない―
最終章
あれから
あれから
奈々と涼真――
世間の声と一部の炎上を乗り越え
今や“本物のカップル”として
ファンからも祝福される存在になった
今日は久しぶりのオフ
2人きりで涼真の部屋で過ごしていた
「……外、出たくねぇな。もうずっとここにいたい」
涼真の声は、少し低くて、甘くて
ソファの隣で寄り添う私の手を、指先でなぞってくる
「える外、出ないの?」
「ん。出てもバレるし、オフの意味無くなる。
お前も落ち着かねえだろ?」
「うん……まぁ、こうしてるのも……いいかも」
そう言った瞬間
涼真の手が、私の頬にふれた
「なあ、またあるだろ?」
「……え?」
「ベッドシーンだよ。次のドラマで」
ちょっとだけ目を細めて
わざとからかうみたいに笑って
「よければその練習相手、また俺がなりましょうか?」
___思わず顔が熱くなる
でも、それを見てる涼真は、あきらかに楽しそうで
「……も、もう……からかわないでよ」
「は?別にからかってねぇよ」
そのまま、唇がふれる距離まで近づいて
一度ため息を吐くようにキスを落としてくる
あたたかくて
やわらかくて
すぐに、息を吸う間もなく次のキスが重なる
「……初めて練習したときのこと思い出したら
やべえ…俺とまんねえわ」
低く掠れた声で囁かれて
腰を引き寄せられた瞬間、重なった体温に全身が包まれる
服の隙間から指先が忍び込む
__肌に触れた瞬間、息が甘く震えた
「…ちょ…やだ、涼真くん…まって…」
「なんで。奈々、やだって顔してねぇよ」
耳元に落ちてきた吐息に背筋がぞくっとする
胸元に触れる唇が、やさしく、でもじれったく這う
「声出てる。気持ちい?」
…小さく頷くと
涼真の目が、熱く揺れたまま私の目を見つめてくる
そのまま指が、喉元、鎖骨、腹部……
ゆっくり、でもしっかりと、私の輪郭をなぞっていく
そして――
「……奈々」
少し動きを止めて
ゆっくり、唇が耳元に寄ってくる
「……俺たち、結婚しよっか」
「え……い、いま言う?」
ふいに告げられたその言葉に
全身が一瞬、熱を止めた
「…今だから言ってんの。…いや?」
少しだけくすっと笑うも、その後
涼真の目は、真っ直ぐ私を見た。
いつものあの茶化しなんて微塵もない
「……ううん……わたしも涼真くんと結婚…したい…」
___その瞬間
ぎゅっと抱きしめられて
また、重なる唇
そのあと、静かに
身体の奥まで熱を分け合うように
深く、深く…愛し合った
――それからしばらくして
2人の共演作は、記録的ヒットとなり
2人の結婚も、正式に世間に公表
今では、世間からも祝福される“本物のパートナー”
仕事も順調、愛も真っ直ぐ__
どこまでも、お互いを想いあってるふたり
そして、今日も――
「ねえ、涼真くん」
「ん?」
「……もう一回、練習しとく?今度のやつ」
「は?またベッドシーンか?」
「……うん」
「演技だろうが関係ねぇ
…どんなシーンでも毎回
お前が1番感じるのも自然に声出んのも
俺とのときだけだって思い出させてやるから」
目の奥、火が灯ったみたいな色してる
ゆっくり近づいて、囁く声が喉に響いた
「……忘れんなよ 誰に抱かれてる時が一番気持ちいのか」
――ふたりの愛は、ずっと続いていく
完


