キスはボルドーに染めて
「知り合いに頼んで、君が泊まる部屋を一室用意してもらったから、送って行こうと思ったんだ。ちゃんと説明するべきだったな」

「へ?」

 男性はそう言うと、陽菜美の鼻先に顔を寄せる。

「それに、ここに君を放って行くと、またいつ泣き出すかも知れないしな」

「そ、そ、そうなんですか……?」

 やっと状況が飲み込めた陽菜美の頬は、あまりの恥ずかしさから、すでに真っ赤だ。

 すると男性はにやりとすると、腕を組みながら悪戯っぽく陽菜美の顔を覗き込む。


「別に今夜、君とどうこうする気はなかったが……そっちがお望みなら……」

「の、望んでませんっっ!!」

 陽菜美は男性の言葉に被せるように慌てて声を出すと、カーっと熱くなった頬に手を当てた。

 一瞬でも“身も心も溺れてしまいたい”などと考えていた自分が、情けなくなってくる。

 すると男性はくすりと楽しそうに笑うと、車を停めているシャトーの前へと向かって歩き出した。
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