アルトの夏休み【アルトレコード】
 16日に帰って来るなんてことは、もちろんアルトも知っている。だけど、もっとなんかいろんな話をしてくれると思った。今日はなにをしたのかとか、楽しかったか、とか。先生と違って北斗の返事は遅いし短くて物足りない。

 いいもんね、と拗ねながらアルトは思う。
「寝そべってゲームやってやるもん。先生はお行儀悪いっていうけど、今がちゃーんす!」

 アルトは床に寝そべってレースを始める。が、意外にやりづらい。腕が床にぶつかって思うように操作できず、首が変な角度になるから疲れるし痛くなってくる。仕方なく起き上がったときだった。

 ぴこん、とブレスレット端末がなり、アルトはすぐさまメールを確認した。
『やっと家に着いたよ~。このあとメールできなくなるかも』
『ぼく、今日ちゃんとしゅくだいやったよ!』
 すぐさま返信し、はっとする。

 先生を寂しくさせるために、メールをしないって決めたんだった。

 だけど……。
 アルトはブレスレット型端末をじっと見つめる。

「返事はセーフ! 無視はよくないって先生がいつも言ってるし!」
 うきうきするアルトに、さらに端末が着信を知らせる。

『えらいね! 帰ったら見せてね』
『レーシングカーがすっごくじょうずにかけたんだ。先生ぜったいびっくりするから!』

『うん、楽しみにしてるね!』
 返事を見たアルトは満足してまた床に座る。
「そうだ、VRのゲームもやろうっと!」
 景気づけに声に出して言い、アルトはまたゲームに没頭した。
< 9 / 26 >

この作品をシェア

pagetop