『堕ちて、恋して、壊れてく。』 ―この世界で、信じられるのは「愛」だけだった。

「夜の帳と嘘の影」




あの日から、私の世界は少しずつ色を失い、闇に飲み込まれていった。
教室の片隅で聞こえてくる囁き。
「あの子、最近恋と喧嘩してるらしいよ」
「裏で誰かとこそこそ会ってるって噂もあるって」



その言葉はまるで、冷たい刃のように私の胸を切り裂いた。



私は何も言い返せなかった。
それどころか、その噂が真実になってしまいそうで、怖かった。

廊下を歩くたびに、視線が私を追いかける。
クラスメイトの中に潜む冷たい嘲笑と、何か計算されたような距離感。





家に帰ると、窓の外に夜空が広がっている。
星は見えず、厚い雲が町を覆っていた。
その暗闇のように、私の心もどんどん重くなっていく。

部屋のドアを開けると、恋がいつものように笑顔で迎えてくれた。

「のあ、今日も疲れた?」
彼の声は優しく、私の心のすき間を埋めてくれるようだった。

「うん、ちょっとね」
私は小さく頷いた。

恋は私の手をそっと握り、強く握り返してきた。
「大丈夫。俺が守るから」


その言葉に少しだけ救われた気がした。
でも、どこかで心の片隅が壊れていくのも感じていた。




次の日、学校でゆあが私のもとに駆け寄った。

「のあ、大丈夫?最近様子がおかしいよ」
彼女の目には心配が溢れていた。

「ありがとう、ゆあ。でも、大丈夫」
そう言いながらも、私はどこか嘘をついている自分に気づいていた。



それから数日、彩芽の存在がますます私の生活を蝕んでいった。
彼女は一軍女子の中でも頭角を現し、明るく振る舞う裏で私への攻撃を続けていた。

「のあ、最近さ、ちょっと目立ちすぎじゃない?」

彩芽はいつもそんな風に言ってきた。


その言葉の裏に隠された嫉妬と敵意。
私はそれを理解しながらも、反論できなかった。



ある日の放課後、彩芽から突然呼び出された。

「ちょっと話があるの」

裏庭に向かう足が震えた。
何が待っているのか、わからなかった。

彼女の瞳には冷たい光が宿っていた。

「のあ、あんた、全部知ってるんだろ?」



私は黙ったまま、その言葉を飲み込んだ。


彩芽は続ける。
「本当は私たちが邪魔なのよね?」

彼女の声は嘲笑に変わっていた。



私は何も答えられなかった。
けれど、その一瞬で、私の心は深く傷つき、ひび割れた。

その後、クラスの空気は一変した。
噂は一気に広まり、私を孤立させた。


恋も変わった。


「のあ、信じてほしい」
彼の声は震えていた。



でも、私の心はすでに揺れていた。

夜になると、私は窓辺に座り、星の見えない空を見上げた。
心の奥にぽっかりと空いた穴は、誰にも埋められなかった。


「どうして、こんなに苦しいの?」
自分に問いかける。

それでも、恋の手の温もりだけは、確かにそこにあった。

だけど、私はもうすぐ、自分の居場所を完全に失いそうだった。
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