パラノイア境界線
「大丈夫。大丈夫だから……」
何が大丈夫なのかまったく分からなかったけれど男は何度もそう呟いた。
だけど不思議なことに、あたしはその声のリズムに合わせて呼吸を取り戻すのだった。
「ねぇ君、そこで自分が要らないヤツだったんだって勘違いしちゃいけないよ」
優しい雨のように降ってくる彼の言葉。
囁くように、口ずさむように話す彼は、とても大切そうに言葉を紡いでいるのが分かった。
「一緒に太陽を探そうか」
その言葉にハッとする。
それは襖の中に身を丸くしていたあたしが1番恋い焦がれていたものだった。