白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。


 人間は長い間、ずっと妖に怯えながら暮らしてきた。刀や槍といった武器は妖には効かないため、人間にできることといえばせいぜい、妖が特に力を強める夜に大人しく家に籠っていることぐらいのものだ。

 そんな中で唯一妖に対抗し得るのが、「陰陽師」と呼ばれる者たちだった。

 陰陽師たちは霊力という妖が持つのと同じ力を持っており、不思議な術を使える。通常の物理攻撃がほぼ効かない妖は霊力から生み出される術よって祓うことができる。妖は自らも霊力を操る一方で、弱点もまた霊力なのだ。

 しかし、紫陽はそんな陰陽師の術を使わず、本来妖には効き目がないはずの刀を使って戦っている。それには少々事情があった。


(この辺りは妖の気配が強い。もう少し見回っておいた方が良いかもしれないけど……)


 紫陽は月明りの眩い夜空を見上げてから、進んできた道に目をやった。

 あまり遠くに行ってしまうと夜が明けるまでに戻れず、家の者に見つかって面倒なことになるかもしれない。それに先ほどの戦闘でそれなりに体力を消耗しているし、早めに休むべきだろう。

 ……そんなことを考えていたときだった。


「見事なものだな」


 背後から聞こえた、低く静かな、透き通るような声。

 ハッと振り返る。驚いたことに、全く気配を感じ取れなかった。


「誰?」

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