とある研究所員の日記【アルトレコード】
✕月21日(月)
 あああああ!
 どうしよう、やっちゃった。

 今日、食堂で舵木さんとごはん食べてたら、アルトくんの話になった。

 大人型になったアルトくんは明るく元気な青年という感じで、オレンジのメッシュが彼らしくて素敵だ。あれも北斗さんがデザインしたのかと思うと、彼の多才さに惚れそうになる。なんて思ってた、このときまでは。

 アルトくんはどこに行っても人気があって、いろんな人に話しかけられている。
 今日、舵木さんも話しかけられたそうで、うれしそうだった。

 荷物を運んでたら「俺に義体が在ればかわりに運んであげるのに」って言われて惚れそうだったって。

 そうなんだ、ってしか答えられなかった。ニュータイプAIかもって思うと、なんかさ。って思ってたら、「ニュータイプAIがいたらあんな感じだと思わない?」って聞かれてビビった。

 そんなことないよ、って言ったけど、「だってあんなに表情豊かで」って言うの。
 だけどさ、もし本当にそうなら、アルトくんは……その設計をした北斗さんは、どうなるの? 新人はどこまでわかってるんだろう……。

 もしそうなら犯罪だから、「北斗さんがそんなことするわけないよ」って言ったら、「ニュータイプAIって開発が難しいらしいじゃん。北斗さんくらい有能ならできそうじゃん?」って言われた。

 確かに、って思ってたら、「お褒めに預かり、光栄だねえ」って声が聞こえて心臓が止まるかと思った。
 だって、振り返ったら北斗さんがいるんだよ!

 ふだんは食堂に来ないのに。なんで来てるの!? って思ってたら、舵木さんが「食堂に来るの珍しいですね」って言った。「たまにはね」って北斗さんは笑ってたけど、なんか怖い。

「アルトがニュータイプかもって聞こえたんだけど」って言うから、また怖かった。「アルトくんがすごすぎるから」って同僚が言ってて、私はひやひやした。
 舵木さんが「ほんとはどうなんですか?」ってしつこいから思わず、「アルトくんはニュータイプじゃない!」って叫んじゃった。

 ああ、やっちゃった。恥ずかしい。あのとき、食堂のみんなに一斉に見られて、もうほんと、今なら恥ずか死できるって思った。

 それにさ、こんなふうに叫んだらまるで「アルトくんがニュータイプAIだと思ってます」って言ってるみたいじゃない?

 舵木さんは「ごめん」って謝ってくれたんだけど、私も北斗さんに謝って、そのときの北斗さんの言葉がすごく怖かった。

「いいよ。ニュータイプは禁忌だから過剰に反応するのもわかるよ。映画とかだと極秘に開発してる人がいて、それを見つけた人が開発者に殺されたりしてさ。現実にあるわけないけど」

 笑ってたけど、目が笑ってなかった。北斗さんは光の加減で瞳が青く見えるときがあるけど、このときも青く見えて、それが人間ぽくなくて、すごく怖かった。

 これって、「しゃべったら殺す」っていう警告だよね。
 アルトくんはニュータイプAI。
 この秘密は絶対に誰にももらさないようにしないといけない。

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