† of Holly~聖の契約
うおおう、うおおう、うおおう――と空気はうねり、唸っている。

……そうか。

四方の土地から発せられている気配が、なにもかもを歪めているのやもしれない。

人々の正常も、土地の四方に巣食うなにかが掻き乱しているのだ。

人の意識に影響するほどの邪気ならば、空気など、容易く揺れてしまおう。

ゆえに姉上はこの地に居座り続け、この地を守り、そのために、果てた。

だが……そんなこと、気付いたところでなんになる。

私は決めたのだ。

異常など、すべて祓ってくれようと。

目的と手段が入れ替わっていることに、自分でも気付いていた。

気付いていたが、それを是正しようなどとは思わない。

あるいは私も、通常ではないのだ。

復讐を果たせるのならば、この村の正常などどうでもよく、私の正常が貫徹できればそれでよい。
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