『☘ 好きだったのよ、あなた……』
【改稿版5】 ◇従順な妻を迎えて

両親との同居を嫌がらず、年下の従順だけが取り柄の大人しい女と再婚したが
年齢差もあるかもしれないが、仕事や政治の話なぞ、全く話がかみ合わず
今の妻との会話はいつも表面的で、深い話はできない。

政治や仕事の話を振っても、返ってくるのは首をかしげるだけ。

真帆は何を話しても、打てばすぐ響くような反応を返していたから
よけい、今の妻のつまらならさが浮き彫りになる。


しかも、実母との同居もうまくいっていない。

同居を受け入れたからといって母親()と上手くいくとは限らないのだ。

最初は大人しく俺の母親に合わせて我慢していたようだがその内妻は
反抗的になり毎日のように俺に母親の愚痴を話しまくるようになった。

夫婦の会話と言えば「義母さんたら、酷いのよ~」が枕詞になっているほどで、
毎晩、同じ言葉で始まる会話にうんざりしている。

挙げ句、生まれた子は娘だった。
俺の両親は期待していた“跡取り”ではないと、あからさまに落胆した顔を見せた。


……その時、ふと真帆の言葉が蘇った。

「息子は夫に見てもらってるから」

その一言が、胸に重くのしかかった。

あの時、彼女をもっと理解しようとしていれば……
彼女の味方になっていれば……

そしてふたりの間に子供ができていたなら、更にその子が息子だったなら
真帆と俺や俺の実家との軋轢もかなり少なくなって、案外うまく結婚生活も
続けられていたかもしれない……
もしかすると俺たちは違う未来を歩めたかもしれない……

そう思うと宏は地団太踏みたくなるのだった。


「今の奥さんっていくつなの?」

「29才……」

「ってことは、結婚した時は27才くらいかぁ~。やるね、流石。
私みたいな屁理屈こねるおばさんと別れて正解だったじゃない。

あなたは若いお嫁さんと娘ちゃんをGet。
私は頼れる年下夫と可愛い息子。どっちも幸せ
……ということは私たちwinwinだね」



「あぁ、まぁそうだね」
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