【改訂版】満月の誘惑
荘司さんは時々顔を顰めながらも、次々に思いを言葉にしてくれる。
そして私と森で会った時の話になると、目を垂れ下げて、肩まで乱雑に伸びている私の髪を梳かすように、荘司さんの手が行き来した。
やはり、狼になった荘司さんと鉢合わせた時と、囲まれたところを襲われずに済んだあの奇跡は、偶然ではなく荘司さんの意思の結果だったんだ。
「愛する人を目の前にした時、感情が揺らいだ。それに不思議なんだが、今日は人間に戻った時、辛くなかったんだ。体は多少怠かったが胸が熱くて、早く帰らねばと足が動いた」
今こうやって荘司さんを見ていても、この姿から狼になったのは、嘘だったんじゃないかと疑うほど。
傷はあるし息も荒いし、そういう面では疑わしいけれど、頭にあった手が私の手に下りてきた時、少し触れただけで解けてしまうような、脆いものを触るような繊細な手つきだった。
「荘司さん…。私、荘司さんを待っている間、私に言ってくださった言葉を思い出していたんです。ありのままを受け止めると言ってくださったこと、覚えていますか?」
「もちろん。私は柚葉の全てを受け止める」
「それは私も同じ気持ちです。荘司さんが狼であろうと、ありのままを受け止めます。荘司さんは私にとって大事なお方ですから」