先輩と僕。

僕はそんな倉本先輩の顔を覗き込みながらそっと彼女の髪からまとめたピンを取り去った。


ふわり、と黒い髪が梳かれ床に優雅に流れる。





「先輩、”俺”は


そんな先輩が好きなんです―――


頑張ってるあなたが



好きなんです。



だから中途半端なんて言わないで」




彼女の耳元でそっと囁くと、先輩は「ん~?」とうわごとをもらし気持ち良さそうに目を伏せとうとう眠りに入ったようだ。僕は着ていたスーツの上着を彼女の肩にそっと掛け


マンションを後にした。


―――次の日


「遠藤くん、この数字間違ってるわ。やり直し…」


「はい!十分以内にメール送ります!」


僕が倉本先輩の言葉を先回りして言うと、彼女は赤い唇にちょっとだけ微笑を浮かべた。けれどすぐ表情を引き締めるとまたもふいと顔を逸らしてピンヒールを鳴らして行ってしまう。


けれど彼女が立ち去る瞬間聞こえた。






「いつからそんなに成長したのよ、


”俺”なんて言っちゃって。オトコの顔見せてるんじゃないわよ」





僕は喉の奥でくすっと笑みを漏らした。


昨日のこと覚えてんじゃん。


”俺”頑張っちゃうよ??





~END~



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