吉野主任は年下大型ワンコ系部下に頭を撫でられたい


「吉野君、ちょっといいかい?」

 それは定例会議後ーー部署へ戻ろうとしていた背中を呼び止められる。

「小佐田部長?」

 室内へ留まるようジェスチャーで伝えてきて、傾げる。部長もこれから同じ場所に向かうのに。
 先程も報告したがプロジェクト進捗率は概ねスケジュール通り。といえ油断せず、早く席に戻って作業を再開したい。

「どうかされましたか?」

 言いつつ、腕時計を確認する。

「忙しいところ悪いね。この後、打ち合わせでも入っているのかな?」
「えぇ、西山君が得意先回りから帰ってきたら話したい事があるそうで」
「西山、ね」

 小佐田部長は席を立つ素振りがなく、西山君の名を訝しげに唱える顎を撫でた。主任に抜擢して貰った恩義を感じつつ、部長の仕事に対する向き合い方は尊敬できない。はっきり言ってしまうと皆の努力の上であぐらをかいている。
 どっしり構え、それはここぞの場面で動くのではなくて美味しい部分をかっさらっていく為。スーツ越しでも分かる膨れた腹部を睨んでしまう。

「奴がプロジェクトに参加するとは意外だったよ。手一杯のはずでは? 抱えている仕事に影響がないといいが」
「その点は十分に注視しています。あのーー」

 すでに他の出席者が出ていき、私達のみ。妙な緊張感を演出するよう置き忘れたペットボトルから水滴が滲む。

「立ったままじゃ話しづらい。ほら、座りなさい」

 隣の席の椅子が引かれる。

「吉野君は最近、綺麗になったね? 身なりに気を遣う余裕が出来たのかな?」

 仕方なく腰掛けた途端、部長の手が頭部へ伸びてくる。
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