絆の光は未来へ
疑問に思いながら、光希はそれをタップした。耳元にスマートフォンを当てると、わずかなノイズの後、微かに震える声が聞こえてきた。

「た、助け……て……」

その声は、途切れ途切れで、苦痛に歪んでいた。そして、聞き間違えるはずがない、愛しい幼馴染み、あゆかの声だった。

ツーツー……という無情な切断音と共に、通話は途切れた。

光希の血の気が、一瞬にして引いた。コーヒーカップを持つ手が震え、熱いコーヒーがカップから溢れ、ソーサーにこぼれ落ちる。

(あゆか……!?一体、何が……?)

彼はすぐに履歴を確認した。発信時間は、留守電通知に示された時刻。自分が学会の交流会に参加しており、集中するためスマートフォン(メインとサブ、どちらも)は鞄に入れ、受付フロントに預けていた、まさにその時間帯だった。

なぜ、その時に気づかなかったのか。学会の準備や発表に集中していたとはいえ、あゆかからの電話に気づかなかった自分に、激しい後悔が押し寄せた。

そして、その日の午前、病院の電子カルテシステムにアクセスする時間になった時、光希は凍りついた。
< 32 / 284 >

この作品をシェア

pagetop